東村山市立の小中学校がPTAに個人情報を記載した名簿を提供したのは違法として保護者が学校長を提訴した問題で、同市教委は市内の市立小中学校全校を対象に個人情報提供や会費徴収方法などPTA活動の実態調査を進めていることが、6月24日分かった。
訴訟の原告は、同市立の中学校と小学校に通う兄弟の父親。両校が保護者の同意なく、PTA に児童・生徒の氏名・学級・兄弟姉妹の学級名などの個人情報を記した名簿を提供したのは、公務と無関係な私的団体活動への不適切な関与に当たり、地方公務員法に違反するとして5月、両校の校長に1円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁立川支部に起こした。
訴えに対して市教委は「(校長に訴状が届いたことについては)確認しているが、被告は校長個人ということもあり、市教委としてコメントは控えたい」としている。
市教委によると、両校以外の市内の小中学校でも、同様に氏名・学級などが記載された名簿を提供したり閲覧させたりしていたケースがあった。現在、兄弟が通学する小中学校ではPTA活動を停止しており、小学校は6月20日、保護者に向けて名簿利用に同意するかどうかの意向を確認する文書を配布した。同意しない場合は提供済みの個人情報について削除と利用停止をPTAに申し入れるという。
実態調査は市内にある市立小学校15校、中学校8校の計23校が対象。名簿の提供や会費の徴収の際に教職員がどの程度関わっていたのかなどについて尋ね、活動について詳細に記述するアンケート形式をとっている。
回答者は各学校の校長で、回答期限は7月初旬まで。市教委の担当者は「学校で不適切な対応があったことについては真摯に受け止めている。まずは実態を確認する作業に注力したい。その上で、改善するべき点については速やかに事態の改善を図りたい」と話している。
アンケートに併せて服務規律の順守と留意事項に関する通知も各校に通知。留意事項として教職員のPTAへの関与については「PTAは任意団体なので明確な線引きを既に示している。個別に指導が必要なケースにはあらためて対応していきたい」と説明した。

PTAの運営をめぐる問題については、6月11日の東村山市議会定例会で横尾たかお市議(公明党)が一般質問で取り上げた。教育部長は「PTAは任意団体で加入には本人の同意が必要」としたうえで、個人情報の提供について「同意が必要で、同意が確認できないまま情報が提供された場合は原則として当該情報の削除や利用停止等の是正措置を講じる必要がある。ただ同意が確認されなかった場合でも後日、追認同意を得られた場合には必要に応じて本人確認や意思確認の手続きを行うことが適当だ」と答弁した。
会費徴収については「(教職員が)学校の職務として別団体であるPTAの金銭管理に関与することは正当な職務の範囲とは評価できず、勤教務時間中に直接PTA会費を取り扱うことは問題が生じうる運用と捉えている」と答えた。
原告の父親は「SNSで問題を公にして以降、全国の保護者や教職員、元PTA関係者から驚くほど多くの声が届いている。『声をあげられなかった』『助けてください』という声に触れ、一地域の問題でなく、全国に及ぶ構造的課題であると確信した。私の目的は決してPTAの存在を否定、敵視することではない。保護者と学校、教育行政が信頼と適正手続きに基づいて協力できる環境であってほしい。学校とPTAが問題の本質と真摯に向き合い、透明で公正な運営に転換していくことを強く望んでいる」と話している。
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