熱のこもった講演に子供から大人まで聞き入った

 西東京市図書館は8月17日、夏休み恒例の「子どものための地域を知る講演会」を同市谷戸町の谷戸公民館で開催した。今年のテーマは『ロード・オブ・ザ・ニシトーキョー 「道」からつむぐ江戸物語』。成蹊中学・高等学校教諭の行田健晃(ぎょうだ・たけあき)さんが2時間にわたって講演。歴史を学ぶ楽しさに小学生から高齢者まで約30人が耳を傾けた。

■青梅街道での仕事「継立」とは

 「紙芝居を見るような感じで聞いてください」―。スライドや配布された明治初期の絵図などを示しながらの講演では、江戸時代の田無・保谷にまつわる2つの道として、青梅街道と玉川上水にスポットをあてた。

 江戸時代初期、江戸城本丸の材料・白土(石灰)を運ぶためにつくられた青梅街道は、山梨県から東京都青梅市を通り、新宿区までの約130キロに9つの宿が置かれ、その一つが田無宿だった。

 「田無村の来歴が書かれた文書を見ると、もともとは現在の位置から4キロほど離れたところに多くの人が住んでいました」

 田んぼがなく、水の確保にも不自由する現在の場所になぜ人々が移ったのか。その理由が街道を行き交う武士たちの荷物運びや馬の交換をする「継立(つぎたて)」という仕事をするためだったと明かす。武士から人馬の調達を命じられ、年間で馬160頭、荷物持ちはのべ2200人にもなった(江戸時代末期の田無村の人口は約1500人)。

 「幕府の重要な仕事の継立はタダ働きでしたが、それ以外は有料。その料金表の高札が西東京市に残っていて、市の文化財にもなっています」と写真なども紹介した。

■玉川上水由来の地名に納得

 もうひとつの道(水道)の玉川上水は1653年、江戸に住む人のための飲み水として引かれた。田無・保谷は江戸に含まれていなかったが1700年ごろからそれぞれ分水が許可され、使えるように。ただ保谷の分水・千川上水は今も流れているが、田無分水の水路は痕跡がなく、行田さんは、田無用水はどこにいったのかと問いかける。実は、青梅街道をはさんで二本あった田無分水は暗渠(あんきょ)となり、その上が遊歩道「やすらぎのこみち」「ふれあいのこみち」になっている。かつて二本の分水が交わる青梅街道のあたりには橋があり、現在もある「橋場」の地名の由来になったと話すと、うなずく参加者も。

 また、玉川上水は取水のほか、絵師・歌川広重も描いた桜(小金井桜)の名所で、人々が花見を楽しんだエピソードも。

 一方の青梅街道は人々の生活やさまざまな商売、伊勢参りなど農民たちの旅にも利用されたが、同時に苦難の歴史もある。幕末に人馬継立で幕府から無理難題をつきつけられ、田無村名主の下田半兵衛らが長文の書状で農民の窮状を訴えた話。明治には、農民から米や金を集める県知事の政策に周辺12村の農民が青梅街道を行進し、反対を訴えたところ、大砲や刀で襲われ、多数の死傷者が出た「御門訴(ごもんそ)事件」も紹介された。

■歴史を学ぶ楽しさ満喫

 行田さんは「江戸時代の人たちはどんな顔をして道を歩いていたのか。古文書をひもといたり、同じ道を歩いたりすれば、そこで彼らの姿、表情を感じ取れる。歴史を学ぶ楽しさはそういうところにあるのではないか」と結んだ。

 講演後、母親と参加した小学6年女児は「自分が住んでいるところの歴史が身近に感じられた」といい、橋場の地名の由来など、「友達にも教えたい」と目を輝かせた。高校2年の男子2人は「部活の歴史研究部で青梅街道について調べていたので参加してみました。当時の人たちがどういう思いで道を歩いていたのか考える視点を持てた」。70歳近いという女性は、「歴史を学ぶって楽しいことだったのだと思いました。今からでも勉強するのは遅くないと、希望が持てた」と話していた。

 行田さんは東久留米市出身で、西東京市文化財保護審議会委員も務めている。この講演会は自ら市図書館に提案して2017年にスタート。7回目の今回は小中高生の参加人数が過去最高だった。

 「今回は新たにYouTuberみたいなこともやって楽しかった」と振り返ったように、自ら青梅街道をたどり、玉川上水の桜をリポートし、伊勢参りする農民のように箱根の山道を歩くなどの動画も披露し、好評だった。

 「年々講演のクオリティが上がり、充実感もあります。今後もできるだけ続けたい」と意気込み新た。来年の夏も楽しみだ。

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By 倉野武

1961年、東京生まれ。20年前から西東京市在住。新聞社で30年以上の取材経験があり、近年は地域への関心を高めている。趣味は西東京市のいこいの森公園でのランニング。

One thought on “西東京市図書館で恒例の歴史講演会 「道からつむぐ江戸物語」に小中高生ら”
  1. =西東京市図書館で恒例の歴史講演会 「道からつむぐ江戸物語」に小中高生ら=
    興味深く読ませていただきました。
    素敵な企画をどのように打ち出し、子供たちが飛びついてきたことに関心をもちました
    情報が氾濫する中で素敵な企画を見つけることが課題となりました。

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