戦後80年を特集した地方新聞

 全国各地の地方新聞の元旦紙面を手に取って読むことができる新年恒例の「第45回ふるさとの新聞元旦号展」が小平市立図書館で開かれている。元旦号の一面は地域の大型事業の特集記事や連載企画など各紙が特色ある紙面を展開する。今年は能登地震1年や戦後80年の特集のほか地方の人口減少をテーマにした記事が並んだ。2月3日まで市内4つの図書館を巡回する。

 地方紙を通じて時代と列島各地の今を知ることができる長寿企画。全国のブロック紙、県紙、地域紙約60紙に元旦号の寄贈を依頼し、期間中、新たに到着した元旦号は随時展示に加える。

 2024年1月1日は能登半島地震の報が列島を揺るがせた。あれから1年。新潟日報、北陸中日新聞、中部経済新聞、神奈川新聞のほか、全国紙では朝日新聞が一面のトップで特集記事を掲載した。まだ図書館には届いていなかったが、北国新聞(石川県)は「『復興元年』日は昇る」と題する「特別号外」として、追悼式の様子や記者が見た被災地の1年、各地からのメッセージなどを計12ページで展開した。

 戦後80年の特集としては、下野新聞(栃木県)が地元の戦禍の記憶をたどる連載「平和のかたち とちぎ戦後80年」を始めた。昨年の日本原水爆被害者団体協議会(被団協)ノーベル平和賞受賞を受けて、山口新聞は連載「戦後80年 争いのない世界を山口から」を県被団協会長のインタビューでスタート。沖縄タイムスなど全国18の新聞社が戦争体験者の証言を共有して掲載する連載「あの時 私は」も年明けから各紙で始まった。

 毎年、独自の元旦紙面を展開している琉球新報は、沖縄県糸満市の「平和の礎(いしじ)」に刻銘された沖縄出身の戦没者で死亡年月日がわかる14万2千人余りのデータを琉球大学の協力を得て分析。その結果、18歳と1歳が4千人を超えて最も多いことが分かり、若者や子どもを犠牲にする戦争の実態をあらためて裏付けた。

 今年目立ったのが、地方の人口減少をテーマに据えた記事だった。山形新聞の連載「県人口100万人割れ~その先の山形新章」、福島民報の座談会の見出しは「若者が輝く福島に 人口増加、定住促進 官民で新たな挑戦」、福島民友の座談会の見出しは「住んで良かった古里へ 中高生が照らすふくしまの未来」。山陰中央新報(島根県)社長と石破首相対談の主要トピックの一つが、やはり人口減少への歯止めだった。

 地方からの若者流出と関わりがあると思われるのが、信濃毎日新聞(長野県)の「性別役割 人生に深く影響」と題した記事。性別差別の実態を明らかにしようと同紙が全国20の地方紙や専門紙に呼びかけて実施した合同アンケートで、性別による偏見や差別などを理由に地元を出た人のうち8割が女性だったという結果を伝えている。

 家事・育児や介護について多くが「性別に関係なく担うべきだ」と考えているにもかかわらず、現実には性別で役割分担している実態も明らかにした。同紙は「男尊女卑や家父長的な古い価値観、『男は仕事、女は家庭』といった性別役割分担意識が、女性の人生の選択に深刻な影響を与えている実態が浮かんだ」としている。

 1月9日時点で集まった地方紙の数は34紙で、今年は例年に比べて出足が鈍い。市中央図書館の担当者は「郵便料金の値上げが響いているのではないか。来年はせめて送料を着払いにして、集まる地方紙の数を増やすことができれば」と話している。 

 元旦号は中央図書館(1月5〜12日)で展示後、上宿図書館(14〜20日)、大沼図書館(22〜27日)、小川西町図書館(29日〜2月3日)を巡回する。

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By 片岡義博

共同通信社の文化部記者として主に演劇、論壇を担当。福岡編集部、文化部デスクを経て2007年にフリーに。書籍のライティングと編集、書評などを手掛ける。2009年から小平市在住。

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