三叉路に渡されたふせぎの大蛇

 2025年は巳年であるという。

 はなこエリアに蛇に関わる伝説や民話は残っていないかと考えたところ、以前くるめラのラジオ番組で取材した清瀬市の舞台伝説を思い出した。

 大蛇に関する伝説であり、関連するといわれる行事が現代にも引き継がれている。さらにその行事は東京都の無形民俗文化財にもなっている。

 清瀬市の北東端、柳瀬川に沿って広がる下宿(したじゅく)地域に、かつて大きな沼があったという。その沼には大蛇が住んでおり、村人たちは恐れて誰も近づこうとはしなかった。

 ある日子供が大蛇を一目見ようと沼に近づいたところ、水の中から大蛇が現れて子供を飲み込んでしまった。

 その出来事を受けて村人たちが話し合い、大蛇をおびき出すために踊りを踊ろうということになった。沼の近くの小高い場所に舞台を作り、そこで踊ろうというのだ。

 舞台が出来上がり、村人みんなで踊ったところ、狙い通り大蛇が姿を現した。

 この機会を狙っていたのが村一番の弓自慢の若者だった。若者が矢を放つと見事大蛇に命中し、頭をもぎ取ることに成功した。大蛇はのたうち回って柳瀬川の方向に逃げていったという。

 舞台があった場所は「舞台」、矢が飛んで行った土地は「矢崎」、大蛇の頭が落ちた土地は「井(射)頭」、大蛇が逃げていった土地は「頭なし」と、村の地名(字=あざ)にも残っていた。地名の一部は、所沢市内にまで及んでいる。

字舞台は現在の水再生センターのあたりといわれ、今も水再生センターの正門の脇には、「ぶたい」と書かれた碑が建っている。

 毎年5月に行われ、東京都の無形民俗文化財である「ふせぎ」行事は、この大蛇伝説に関連した行事といわれている。

 下宿の円通寺に住民が集まり、大きい蛇と小さい蛇をわらで作る。大きい蛇は円通寺横の三叉路にある2本の木にかけて渡す。小さい蛇は旧村の境14カ所に取り付けられ、村に疫病や悪魔が侵入しないように祈願するという。

 同様の大蛇伝説は柳瀬川を挟んだ対岸の所沢市にも残っているのだが、大蛇(竜とする説もある)が「滝の城」(所沢市)の「霧吹きの井戸」に住んでいたとするなど細かい点が異なっており、この辺りも興味深い。 

 【関連情報】
・ぶたい(清瀬市

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By 高橋靖

東久留米市のコミュニティFM局「TOKYO854くるめラ」代表取締役。

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