保護者に配布されたPTAに関する文書(写真は一部加工しています)

 東村山市立の小中学校がPTAに個人情報を記載した名簿を提供したのは違法として児童・生徒の父親が学校長を提訴した問題で、中学校とPTA側が長年、保護者らにPTAへの入会意思を確認することなく会費を教材費の一部として銀行から自動引き落としにしていたことが6月20日分かった。父親からの指摘に対して校長は全保護者に謝罪する文書を配布し、会費徴収の仕組みを是正することになった。

 訴訟を起こしたのは東村山市立の中学校と小学校に通う兄弟の父親。学校が保護者の同意なく、任意団体であるPTA に児童・生徒の氏名・学級などの個人情報を記した名簿を提供するなどしたのは公務と無関係な私的団体活動への不適切な関与に当たり地方公務員法に違反するとして5月、両校の校長に1円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁立川支部に起こした。

 父親によると、今年4月、長男が通う中学校PTAに「入会した覚えがない」と伝えたことに対し、PTA会長から4月15日付けの手紙が学校を経由して渡された。手紙では全保護者を自動的にPTA会員として扱い、入会しない場合も「年1800円を『PTA会費』としてではなく『協力費』の名目で」学年教材費と同時に引き落として徴収し、「協力費」は「生徒の傷害保険・損害賠償責任保険料、中学の周年積立費、学校図書館の結購入費、入学式・卒業式のコサージュと卒業記念品の代金等」に使われることが記されていた。

 父親は4月22日開催の中学校の保護者会に出席した際、PTA会費の自動徴収や、生徒の個人情報を記した名簿が本人の同意なく学校からPTAに提供されていた事実を確認。問題点を指摘して是正を求めたが、校長は「この場では答えません」と述べるにとどまった。

 保護者会では学校長名で保護者宛ての「教材費の集金について」と題する文書が配布され、3カ月分の教材費として計29000円をゆうちょ銀行からの引き落としで集金することを告知。各教科別の教材費内訳を示した表の最下段に「PTA会費(家庭数)」として1400円、「PTA保険加入料(家庭数)」として400円が記され、事実上、強制的にPTA会費が徴収される仕組みになっていた。

 父親は4月下旬から5月にかけて、同市教育委員会に複数回、PTA運営の任意性、会費徴収の方法、個人情報の取り扱いに関する照会文書を提出し、校長やPTA会長にも事態の是正を求める文書を手渡すなど対話による問題解決を目指した。

 これに対して5月13日、校長名で「PTA活動に対する学校の対応について」と題する文書が保護者に向けて届けられた。文書では、PTA加入が任意であることを明確に伝えず、加入の意思を確認していない状況が続いていたことを謝罪。さらに(1)入会意思の確認とPTAへの情報提供の同意を得ていないのに生徒氏名の一覧表や学校に在籍する生徒の兄弟姉妹の名前を伝えていた(2)PTA会費を教材費の一部として集金していた――という状況が長年継続してきたことについて「お詫び申し上げます」と謝罪の言葉が記されていた。

 PTA会長からは5月1日に開かれたPTA総会の際に「PTA活動の凍結」を知らせる文書が配布され、今年度のPTA会費の徴収方法は見直され、自動引き落としは実施されていないという。

 東村山市教委は教材費とPTA会費が同時に引き落とされていた状況について「学校の会計とPTAの会計は別物で分離する必要がある」との見解を示した上で「今後このようなことがないように別の方法を模索していきたい」と話している。

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By 渡辺正大

ジャーナリスト。共同通信社記者、出版社で編集者などを経験。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース修士課程修了。修士論文「調査報道における取材手法の考察」。調査報道、事件、地方自治、ローカルニュース、いじめなど幅広いテーマをフィールドに取材を続けている。

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