小平市が実施した新型コロナの集団接種シミュレーション(2021年3月)

 自然災害や人為的な紛争の絶えない世界の前兆のように、5年以上にわたって猛威を振るった「新型コロナウイルス」。現在はさすがに勢力がゆるんだかに見えるが、脅威がなくなったわけではない。いったん罹患すると、大変な目に遭うのは、最盛期とさして違わない。

 それでは現在、流行の波はどのような状況になっているのだろうか?

 その疑問に応え、流行の推移を予測する方法を提起する書籍が3月末に刊行された。

 児玉龍三著『チャートでわかる! 新型コロナの流行予測』(言視舎)である。

 この本は、本稿を執筆している者が営む出版社からの刊行だが、そのユニークな発想と方法は、経済学の泰斗から学術的に高く評価されており、その内容は一般的な読者にも有用と考え、本書の基本的な考え方を紹介したいと思う。

▼基本的な考え方

 本書の方法によると、いま=4月初め現在は、第14波が「ピーク」を過ぎ、「収束期入り」したが、まだ「底」を打っていない状況にある、ということになる。

 何を根拠にそういうのか、以下をご覧いただきたい。

 本書の著者である児玉龍三氏は、元銀行マンで大手企業のCFOを務めた経歴を持ち、仕事関係は引退したが、いまも金融理論を研究し続けている。

 コロナ禍の渦中、児玉氏は「コロナの波」と相場予測などに使われる「チャートの波」が似ていることに気づいた。そこから研究を始めて新型コロナウイルスの流行予測にたどりついたのである。それには、いくつかのステップを踏んでいる。

【Step 1】

 コロナの感染者数のグラフの形をみていて、相場のチャート分析に用いる「移動平均線」で予測ができるのではないかと、思いつく。

 「移動平均」は、株価や感染者数の変化の傾向を見えやすくする平均値で、短期、中期、長期がある。一般的に短期は5日、中期は25日か75日、長期は200日だが、ここでは「短期は7日」、「中期は25日」とした。

 移動平均値の求め方は、「7日移動平均」なら、当日を含む過去7日分の実数を足して、7日で割った値がその日の移動平均値になる。計算例は表1の通り。

 「25日移動平均」の計算方法も同じ。

 なお、感染者数は、厚生省が現在も発表しているもの(現在は概数となっている)を使用する。

【Step 2】

 次に「7日移動平均」と「25日移動平均」をグラフ化し、それぞれが描く曲線に注目する。上のグラフを参照してほしい。

 グラフの曲線である「7日線」が「25日線」の上にくる点(golden cross: GX)感染者のピーク7日線が25日線の下になる点(dead cross: DX)感染者の底GX というサイクルになっていることが視覚的に理解できると思う。

 そしてGXは流行波の始まり」、DXは「収束期入り」を意味することがわかる。

 また、GXから次のGXまでを「ひとつの波」と定義できる。そしてこの曲線の形は毎回ほぼ同じであることもわかった。

【Step 3】

 GX→ピーク、ピーク→DX、DX→底、底→次のGXという各イベントの間隔日数は毎回似通っているから、過去の次のイベントまでの平均間隔日数をイベント発生日に足すと、次のイベントの発生日が予測できると考える。

▼現在はどういう時期にあるのか、の計算

 以上の方法を用いて、本書の方法で「これから」を予測してみよう。

 予測手順は、下の表を使って説明する。実際の日付は太字にして予測の日付と区別してある。

 表を見ると、14波の波の始まりGX」は、昨年12月25日だったことがわかる。

 この日に、「ピーク」までの平均間隔日数を足すと、「ピークの日」を予測できる。やってみよう。

 表を見ると「GX」から「ピーク」までの平均間隔日数(1波から13波まで)は73日なので、12月25日に73日を足すとピークの予測日ができる。予想日は2026年3月8日となった。しかし、「実際のピーク」が発生したのは2月5日。これは予想日より31日も早く発生した例外的なケースだった。

 次は「収束期入りDX」を予測する。やり方は上と同じで、起点日に平均間隔日数を足すだけ。起点は実際のピーク日2月5日(2列目)で、予測は2月16日、実際は2月12日だった。これは大きな誤差はなかった。

 この方法で計算していくと、14波の「感染者数の底」は4月22日、14波が終わり「15波に突入」するのは5月3日と予想される。そして、いま=4月初め現在は、14波が「ピーク」を過ぎ、「収束期入り」したが、まだ「底」には至っていない時期にある、という結論が導き出される。

 くりかえしになるが、この方法によれば、いま私たちが流行のどの局面――①流行波の「始まり」、②流行波の「ピーク」、③流行波の「収束期入り」、④流行波の「底」(→「次の流行派」の始まり)——にいるのかを知ることができる。

 以上が、児玉龍三著『チャートでわかる! 新型コロナの流行予測』のエッセンスをまとめ、「これから」についてはそれを応用したものである。この本では、さらに詳しい理論的な解説に加え、3波の緊急事態宣言が感染収束期に発令され、さらには次の波が始まり、これから感染者が増える時期に解除するなど、ちぐはぐな対応がなされたことが示され、また海外との比較など興味深い事例も載っている。未来予測のツールとしても有用だと思われる。

 次の波は5月という予測となった。注意するに越したことはないだろう。

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By 杉山尚次

1958年生まれ。翌年から東久留米市在住。編集者。図書出版・言視舎代表。ひばりタイムスで2020年10月から2023年12月まで「書物でめぐる武蔵野」連載。著書に『西武池袋線でよかったね 郊外から東京を読み直す』(交通新聞社新書)等がある。

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