地方自治体での生成AI活用の可能性や課題を考えるシンポジウムが7月31日、府中市市民活動センターで開かれ、多摩地区の自治体職員や住民など約200人が先進地の実践例などに耳を傾けた。東京市町村自治調査会が限られた要員体制でも安定した公共サービスが提供できるように生成AI活用の道を探ろうと多摩・島しょ地域を対象に開催した。
同調査会によると、生成AIは全国40%以上の自治体が導入済みか実証実験中(2024年末現在)で、既に「一部先進自治体の試行」段階から「全国的な普及」の段階に移行している。多摩・島しょ地域でも、39市町村のうち26市町村がなんらかの形で生成AIを利用しているが、信頼性やセキュリティなどへの懸念から、用途はまだ議事録など文書作成に限られているのが現状だという。
シンポジウムではまず、AIを応用したシステムの開発に長くかかわってきたNTTアドバンステクノロジの佐藤周一さんが基調講演を行った。佐藤さんはまず、2022年11月に生まれた生成AIがわずか3年余りで、「人間の指示による文書・画像の制作」段階から、「自律的に判断して課題を実行」する段階へと飛躍的に進化しているとの現状分析を示した。
一方、生成AIは学習したデータから推測して結論を導いているため、データ不足や歪みが原因で誤った結論を出すことがあり、データの精査や人間による最終チェックが欠かせないと指摘した。佐藤さんは「AIは人間のすべてを肩代わりできるものではない。何をやりたいかを考え、実現をめざすのが人間。それを支援するのがAI」と述べた上で、人間とAIが協力して新しい価値を見出す時代がそこまで来ていると強調した。
このあと、パネルディスカッションが行われ、全国に先駆けて全庁に生成AIを導入した神奈川県横須賀市、独自の生成AIを構築した東京・葛飾区、小規模自治体として全庁態勢でAI導入にチャレンジしている北海道当別町の担当者が登壇し、取り組み状況を紹介した。
このうち、横須賀市の担当者は、2023年4月に対話型の生成AIを導入し、現在、職員の約7、8割が利用して残業削減にもつながっているが、最大の効果は『困ったらまずAIに聞く』という文化が醸成されたことを報告。市民サービスへの展開としては、閉庁時間帯に相談に乗る「傾聴AI」や市民の健康データをもとに保健師がアプローチする「予防保健」に活用していることなどを紹介した。
葛飾区の担当者は、2024年から全庁で対話型の生成AIの利用を始めたが、既存のAIでは区固有の情報に基づく回答が得られないことから、区独自の生成AI「かつしかChat」を構築し、例規集・計画・起案文書等を厳選して学習、登録し、議事要約などに活用していると説明。さらに住民サービス向上を目指して、「かつしかChat」の「窓口対応版」を整備し、戸籍や保険などの窓口での若手とベテランの応対レベルの差の解消や時間短縮につなげていると報告した。
北海道・当別町の担当者は、人口約1万5千人、職員200人余という小規模さをメリットにして迅速に対応し、2023年10月に生成AIを本格導入。これまでに庁内で75回超の勉強会を開いたほか、新情報などを伝える「週刊マガジン」の発刊、意欲的な職員を「生成AIエバンジェリスト(伝道師)」に任命する制度の立ち上げなどを通じて、職員が気負いなくAIにアプローチできる機運を醸成してきたと述べた。
パネルディスカッションは、まとめとして以下を確認した。
▼生成AIの活用によって、自治体職員は定型的な事務処理から解放され、住民に向き合う本来の行政サービスに時間を使えるようになること。
▼AIに100点を求めず、学習させる情報を精査し、最後は人間が判断するという原則を堅持すること。
▼自治体間でAIの基盤や運用事例、人材育成のノウハウなどを共有し、導入コストの削減をはかること。


![]()

