憲法に関する映画を1、2カ月に1回のペースで自主上映し、参加者同士で話し合う会を13年以上、88回にわたって続けてきた元映画会社社長がいる。国分寺市在住の花崎哲さん(74)だ。「憲法を守る、のではなく憲法が何を求めているのかを一人一人が探してゆく」「憲法が大切にしているのは国ではなく人、命、そして世界だと思う」と語る花崎さんにこれまでの活動に込めた思いを聞いた。
―まず自己紹介を
「栃木県大田原市出身。東京教育大学在学中に映画上映に興味を覚え、卒業後桜映画社に入社、社長も務めた。戦前・戦後を通じた女性運動活動家、参院議員の市川房枝の映画を手掛けたことからその市民運動に傾倒し、1982年から2年間『戦争を考える映画の会』を催した。2013年、憲法改正の機運が広がってきたことへの危惧を感じ、『憲法を考える映画の会』を始めた。主に東京都内で上映会を続けて88回、2026年8月29日に89回目として韓国映画『1923』(原題・関東大虐殺)を上映する」
―自主上映でこれほど続けるのは費用的に大変だったのでは?
「始めてから40回目ぐらいまでは赤字が続いた。経費を支えたのは1人1000円の参加費だけで、今もそうだ。最初、参加者は20人規模だったが、その後は常連を中心に平均100人規模で、400人を集めたこともあり、これまでの累計は1万人を超えた。映画会のスタッフも市民運動の意識で参加しているから“人件費”はかからず何とか続けることができている」
―映画フィルムの調達は?
「プログラムも、はじめは憲法の条文そのものを考える映画が多かったが、人の生活、生命に関わることはすべて憲法の問題と考え、戦争、人権、民主主義、あるいは教育、農業といったテーマの映画にも拡げていった。よそで自主上映会があることを知ると『その映画は自分たちも使えるか』とすぐ連絡を取って映画の入手先を尋ねた。そうして集めた映画200作品を載せた『憲法を考える映画のリスト』をつくって、誰でも上映会が出来るようにしている」

―上映活動で大切にしていることは?
「必ず毎回手元資料(16ぺージ)を作っている。映画を鑑賞するだけでなく、その後に感想を話し合うことが大切。誰が参加してもいいし、何を話してもいい。話すことに慣れている人もいるが、黙っている人が促されてぽつりぽつりと話すことの方が面白く、感動することが多い。『映画 日本国憲法』という映画を監督した米国人が参加してこのようなトークシェアを聴いて『これこそが民主主義だ』と発言したこともある」
―最近の風潮として、映画の内容やこのような活動に反発や妨害などがあるのでは?
「慰安婦問題を扱った映画上映の時などは右派系の人がたくさん来て『私たちにも話させろ』と要求しワイワイと議論になった。右翼の街宣車が来たこともある。こちらとしてはむしろ議論になることは歓迎する。映画を通じて何かを主張するのではなく、あくまでも一人一人が考えるきっかけをつかんでほしい」
―活動の広がりは?
「若い人にも来てほしくて参加費を『ただ』にするなどしているが、どうしても高齢者が中心。でも無理に来てもらえばいいというものでもない。参加者の中から“スピンオフ映画会”として自主上映の動きが広がっている。できる限り力になる。9月30日には東久留米市で憲法映画会が計画されている」
―今後の計画や夢は?
「93回となる2027年4月を一区切りと考えていたが、憲法をめぐる状況はますます厳しくなることが予想される。そこで2028年6月あたりの100回を目標とすることにした。夢はいろいろある。『憲法を考える映画』のデータベースをつくって活用できるようにしたい。大勢を集める上映会よりも研究会、普及会のような形で常にディスカッションし発信したい。過去の作品、海外の知られざる作品、テレビドキュメンタリーなどの情報を集め、作り手や上映活動の担い手たちと連携を図り、関連した書籍なども収集したい」
―これまでの活動を通じて得た憲法像は?
「憲法が目指すものは何かが分かってきた。結局は『人権』だと思う。国のためではなく人の命のためだ。『憲法の個々の条文を守ろう』ではなく、憲法を通して大切な本質を知りそれを守るということではないか」


![]()

