12月7日告示、14日投開票の東久留米市長選に向け、新人のふるたに高子氏が立候補を表明した。ふるたに氏は、生活保護ケースワーカーや児童相談所勤務など、計29年間にわたり福祉行政に従事。市内ではフードパントリーや子ども食堂の立ち上げに関わってきた。今回の立候補にあたり、子ども施策、市民参加、財政情報の見直し、環境分野などを重点政策として掲げている。
はなこタイムスでは、東久留米市のコミュニティFM局「TOKYO854くるめラ」と共同で独占インタビューを敢行。ふるたに高子氏の政策について聞いた。
──まずは自己紹介をお願いします。
ふるたに高子氏(以下、ふるたに氏):
ふるたに高子と申します。現在67歳です。東久留米市には2016年から住んでおり、これまでフードパントリーや子ども食堂の立ち上げを行ってきました。その活動の中で、行政機関や地域センター、社会福祉協議会と連携してきた経験が、今回の立候補につながっています。前職は埼玉県の県庁職員でした。生活保護のケースワーカーを5年、児童相談所で24年と、計29年間にわたり福祉の現場で働いてきました。
──今回、立候補を決意された経緯を教えてください。
ふるたに氏:
私は公務員として正規・非正規の両方の立場で働いてきましたが、その中で常に「市役所とは何だろうか」と考え続けてきました。
東久留米市に住む中で、市民の方々から市役所に対する様々な意見を聞いたり、職員の方々と話したりする機会がありました。福祉の仕事をしてきた人間として、市役所という「公(おおやけ)」が果たすべき役割について自問自答してきました。
例えば、困っている方が役所を訪れた際に「ここは担当じゃありません」と断られ、「もう行くのはやめよう」と心を閉ざしてしまうケースや、障害をお持ちの方の切実な声を聞くこともありました。
また、行政の相談窓口が「縦割り」になっており、継続的な支援が難しい現状もあります。市民にとって市役所の仕事が分かりにくいものになってしまっていることを、私自身が公務員だったからこそ残念に思い、変えていきたいと考えました。
──市長として、どのような政策を実現したいとお考えですか。
ふるたに氏:
東久留米が誇る「水と緑」を守りつつ、特に力を入れたいのは「子どもたちが希望を持てる街づくり」です。貧富の格差が広がる厳しい時代ですが、すべての子どもが当たり前の権利として、食事や学びを保障される街にしたいと考えています。
そして何より、現役の若い世代が市政を身近に感じられる「市民参加」を進めたいです。「自分たちの声が届けば、実際に政策が変わるんだ」という体験を積み重ねてほしい。LINEや市報などを通じて情報を得るだけでなく、市民同士が意見を交わし、それが政策に反映される仕組みを作っていきたいと考えています。
──財政問題については、予算があるのかないのか議論が分かれています。どうお考えですか。
ふるたに氏:
財政分析は指標の取り方によって見え方が変わります。市が出している公共施設の再編計画などを読むと「財政が厳しい」という印象を受けがちですが、必ずしもそうとは言い切れません。例えば、将来のために積み立てている基金(貯金)もありますし、人口推計もかつて予測されたほど減少していません(※1)。
現在進められている公共施設の統廃合計画は、数年前に立てられたものです。当時と現在では、学校の統廃合や保育園の廃止など前提条件が変わっています(※2)。そういった状況をふまえ、計画の根拠となる数字が現在の状況に合っているのか、もう一度見直すべきだと考えています。
学校のトイレ改修などを「予算がないからクラウドファンディングで」とするような意見には違和感があります。まずは正確な情報を市民に公開し、優先順位を再検討する必要があります。
──市民の声を吸い上げるために、具体的にどのようなビジョンをお持ちですか?
ふるたに氏:
市内には、個人でお店を営んでいる若い世代や、カフェなどに集まる若い人たちがたくさんいます。そうした場所に市の職員が自ら出向いていくことが大切だと思います。
スマホで意見を送れる仕組みも重要ですが、もっと気楽に職員と市民が話せる「タウンミーティング」のような場を作りたいですね。役所の中で構えているだけでなく、職員が外に出て対話する姿勢が必要だと感じています。
──東久留米の特徴である「環境問題」についてはどうお考えでしょうか。
ふるたに氏:
現在、市民環境会議の委員を務めていますが、最近は環境に関心を持って移住してくる若い世代も増えています。落合川や黒目川は、市民ボランティアの皆さんの努力で守られてきた貴重な財産です(※3)。
ただ、人が集まりすぎることで環境が守れなくなる懸念もあります。先輩たちが守ってきた自然を次の世代へどう継承していくか、若い方々とも共有しながら考えていきたいです。
──道路建設と自然保護のバランスについては、どうお考えですか。
ふるたに氏:
道路計画については、「もう決まったことだから仕方がない」と諦めている市民の方も多いように感じます。しかし、道路が川や緑地を横断することで生態系が崩れる懸念があります(※4)。
専門家の意見を聞きつつ、何が課題なのかを話し合うワークショップなどを開くべきではないでしょうか。「国や市の計画には口を出せない」ではなく、便利さと環境保護のバランスについて、市民がもっと議論できる場が必要だと思います。
──最後に、市民へのメッセージをお願いします。
ふるたに氏:
ぜひ、投票に行っていただきたいです。選挙は私たちの先輩方が勝ち取ってきた大切な権利です。投票を通じて「選挙とは何か」「市政はどうなっているのか」を考え、選挙後も市政に関心を持ち続けてほしいと願っています。
※1 東久留米市の人口は2015年頃をピークに微減傾向にあるが、令和7(2025)年3月時点の推計では約11万6千人と横ばいで推移している。ただし、市の長期総合計画では令和23(2041)年に約10万7千人になると予測されている。
※2 市内では少子化や施設の老朽化に伴い、下里小学校(2020年閉校)などの学校統廃合や、しんかい保育園の廃止(2021年度末)などの再編が進められてきた。
※3 かつて高度経済成長期には生活排水等で川の水質が悪化した時期があったが、その後の下水道の普及や市民による清掃活動等の努力により、現在は清流が保たれている。
※4 都市計画道路(田無久留米線や新小金井久留米線など)が、南沢湧水地や竹林公園を通過する計画があり、市は自然環境への影響を考慮して整備のあり方について検討を進めている。
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