西東京市図書館が毎年夏恒例の「子どものための地域を知る講演会」を8月16日、同市谷戸町の谷戸公民館で開催した。平成29年から、武蔵野市の成蹊中学・高等学校教諭、行田健晃(ぎょうだ・たけあき)さんが講演してきたが、今年でひと区切りに。10年の思いを込めた最後の講演のテーマは「古文書がひらく村人たちの世界 江戸時代の西東京をたずねた青年と図書館の10年」。
■きっかけは「田無農兵」
東久留米市出身で社会科教諭、西東京市文化財保護審議会委員でもある行田さん。今回の講演では、歴史が好きで歴史の研究をしたいと大学生になった「青年」の話として、この10年を振り返った。
大学で「歴史の研究とは古文書などを読み、過去を明らかにする営み」と知った青年は、市図書館などで古文書を読み、江戸幕末の「田無農兵」をテーマに卒業論文を書いた。大学院に進学し、修士論文を書き上げると、「村の古文書を読んで知ったことは、地元の人に伝えることが大切」との恩師の言葉から、歴史を知り、学ぶ楽しさを地域の子供たちに伝えたいと図書館に相談し、講演会が始まった。
第一回は農兵のほか、江戸時代の田無・保谷の基本情報などの話もした。そして、「もっと江戸時代の様子がわかるような話ができたらいい」と、さらに古文書を探して講演で紹介。新型コロナ禍で2年の休みをはさんで8回行われた。
■江戸時代の農民のしたたかさも
その集大成ともいえる今回、20もの古文書をスライドで見せ、「ここは何と書いてあるでしょう?」「そう、その通り、素晴らしい。はい拍手!」などとクイズ形式で小中学生たちを喜ばせた。一方、村の人口構成、暮らしぶり、年貢の実態などをまとめ、代官に提出した「村明細帳」を紹介し、「村内で盛んだった商売のことが書かれておらず、情報を伏せる戦略も感じられる」と農民のしたたかさもうかがわせる解説で高齢者らもうならせた。
さらに、玉川上水から引いた水の使い道や料金▷安定した生活を願って行われた富士登山▷田無村で4代にわたった名主・下田半兵衛家の奮闘▷田無農兵の実態と江戸時代の終わり―など総集編ともいえる内容も交え、2時間行われた。
「最初に来てくれた中学生が、今は23~24歳になって、時の流れを感じます」と感慨を漏らしながら、自身が今年4月から大学院博士課程に進学したことがひと区切りの理由と説明。「勉強して、パワーアップして戻ってきます」と結んだ。
講演会を聞いた市内の小学6年生女子は、青梅街道をテーマに「図書館を使った調べる学習コンクール」に挑戦しており、市報で講演を知り、街道の歴史などがわかりそうだという母親のアドバイスを得て参加。終了後、行田さんに質問もし、「田無宿の様子を聞きました。役に立ちそうな話題が多く、これでまとめられそう」と笑顔で話した。
■小中学生から大人まで参加に「感無量」
終了後、「はなこタイムス」のインタビューに応じた行田さんは、「歴史の勉強は、古文書を読むことから始まる、古文書を読むことで歴史は紡がれていくのだと伝えたかった。田無・保谷の歴史、自分の歴史と学問への思いを織り込めて、手応えがありました」と語った。
実は第一回の参加者は15人程度で、「このままでは終われない。定着するまで続けたい」の意気込みだったという。最終回には定員の40人を超える人が集まり、講演の案内にも「定員に達したため受付終了」と出たことに「感無量。図書館の皆さんのおかげです」とも。
自身の歴史研究も、自分の驚いた出来事から入り、取り巻く世界、最後は人々の思いに至った。「たとえば下田半兵衛がなぜ村のためにがんばれたのか。その行動を理解するためには社会を理解することが必要という視点も得ました」と振り返り、「歴史をもっといろいろな視点で見られるようになりたい」と前を向いた。
今回の講演の動画は10月上旬以降、西東京市公式チャンネルで公開予定している。


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