災害が発生した地域で復興に向けた話し合いを円滑に進めていくためにはどうすればいいか。「いざという時のために備えよう話し合う力」と題する学習会が3月8日、「忘れない3・11展」を開催中の小平市中央公民館で開かれた。さまざまな災害時の事例を参考に他人と協力して課題を解決していくための知恵とコツを学んだ。(カバー写真:話し合う力を学ぶための学習会)
講師はNPO 法人日本ファシリテーション協会フェローの鈴木まり子さん。東日本大震災や熱海市伊豆山土石流災害、能登半島地震の被災地などで復興がうまく運ぶように話し合いのかじ取りを担うファシリテーター(進行役)として活動してきた。
避難所で立場や価値観が異なる人たちが一緒に生活する場合、食料の分配から赤ちゃんの泣き声、ペットの扱いなどさまざまな理由でいざこざが生じる。そんな時、問題解決のための話し合いをスムーズに進めるための心構えやコミュニケーション術が求められる。
例えば話し合いの場は、参加者が話しやすいように車座になったり床座りにしたりして工夫する。また気安く発言できるよう最初のほうに全員が言葉を発する機会を作る。学習会では2人1組になって自己紹介などをする時間が設けられた。
災害時は多様な困り事が同時に生じるため、しばしば発言内容が横道にそれる。鈴木さんが強調したのは「話し合いの目的を見失わない」ようにすることだ。「今何について話しているか」を常に明確にして、議論の進め方や結論を参加者が納得していることが重要だという。そのため協議したことはA4用紙やホワイトボードなどを使って情報共有し、可視化するよう心がける。
「女性をリーダーに加えること」という基本から「『発表してください』ではなく『紹介してください』と呼びかける」といった細かな配慮まで。ユーモアを交えた鈴木さんの進行に約50人が参加した会場からは活発に質問が上がった。
話が長かったり、人の話をさえぎったりする人にはどう対処すればいいか。「それは話をさえぎってまで言いたいことがあるということ。まず敬意をもってそれを受け止め、訴えの内容を確認したうえで『では他の人にも聞いてみましょう』などと進めていく」と助言。
「組織のメンバーが代わるごとに、既に決定したことを最初から決め直さなければいけなくなる」という悩みに対しては「メンバー交代時の対応を最初から決めておく。そしてどういう経緯で決定したかという情報も同時に引き継ぐ」という対処策が示された。
話し合いがうまく進めば、参加者の当事者意識が高まり、自分たちで納得して決めたことは積極的に行動に移したくなる。例えば避難所の運営を自治体職員が担うと被災者は行政に頼りがちになるが、自主運営にした途端、高齢者も生き生きと動き出すという。
話し合う力は教育現場や市民活動、仕事の現場にも必要だ。鈴木さんは「普段から地域や職場で対話や議論など話し合いを大切にする文化をつくり、進行役の場数を踏めるような機会を提供していってほしい」と話した。
【関連情報】
・日本ファシリテーション協会(HP)
・徳田太郎、鈴木まり子著『ソーシャル・ファシリテーション』(Amazon)