小平市は4月1日から公文書における「こども」の表記を原則、平仮名表記にした。組織名の「子ども家庭部」は「こども家庭部」とし、条例名なども手続きを経て順次変えていく。4月5日発行の市報もさっそく「こども」に統一している。(カバー写真:写真と本文は関係ありません)

 小平市はそれまで公文書では基本的に「子ども」を使用してきた。2018年に策定した「子ども・若者計画」では、末尾にわざわざ表記について「小平市では、国や東京都の法令、計画等の名称を除き、『子ども』を統一的に用いています」と記している。

 表記の変更は国の方針に従った。こども家庭庁の設立準備室が2022年9月、「『こども』表記の推奨について(依頼)」と題する事務連絡で、固有名詞などの特別な場合を除き、行政文書などには「こども」を使用するよう他省庁に呼びかけた。

 その理由を準備室は「こども基本法の理念」に求めている。同法は「心身の発達の過程にある者」を「こども」と定義し、一定の年齢で区切らず全ての子どもの基本的人権を保障することを掲げている。

 当事者である子どもにも分かるように平仮名で示すとともに、小平市総務課は「『子』という漢字を使うと幼い子をイメージしがちだが、基本法はより幅広い対象も含むという趣旨だと思う」と説明する。

 この問題については、これまでも議論されてきた。1973年の内閣訓令で公用文書は「子供」を使うよう指示。しかし、「供」には「供える」「お供する」という差別的な意味合いがあるとの指摘があり、「子供」より柔らかい印象がある「子ども」が広く使われるようになった。一方で漢字と平仮名の交ぜ書きの廃止を訴える声も上がった。

 文部科学省は2013年、常用漢字表に「子供」と表記されていることから、省内の公用文書の表記を「子供」に統一することを決めた。今回の「こども」表記の推奨はそれ以来の方針転換となる。

 ちなみに新聞用字用語集『記者ハンドブック』(共同通信社)では、「子供」「子ども」の両方が使え、[注]として「一般には『子ども』が多く使われている」とある。google検索のヒット件数では「子供」15億8000万、「子ども」7億900万、「こども」6億3300万だった。

【参考資料】
・「こども」表記の推奨について(依頼)(こども家庭庁設立準備室

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By 片岡義博

共同通信社の文化部記者として主に演劇、論壇を担当。福岡編集部、文化部デスクを経て2007年にフリーに。書籍のライティングと編集、書評などを手掛ける。2009年から小平市在住。

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