小平市の市立小学校で使用する教科書の「教師用指導書」について、市教育委員会が今年度まで3回にわたり条例に定める市議会の議決を経ずに計9261万円分を購入していたことが6月24日開かれた市議会全員協議会で明らかになった。市は契約の追認を求める追加議案とともに市長、副市長、教育長の給料を減額する条例案を6月28日の定例会最終日に提出する。(カバー写真:小平市役所)

 教科書の解説や活用方法、板書例などを記した教師用指導書は、教科書採択が実施された年度の翌年度に購入し、次回の教科書採択で新たな教科書が決定するまでの4~5年間使用する。その契約金額が2000万円以上の場合は議会の議決を要することが、契約と財産の取得・処分に関する小平市の条例で定められている。

 ところが、小学校教師用指導書の契約金額が2015年度は約2101万円(1745冊分)、2020年度は約3133万円(1937冊分)、2024年度は約4027万円(1680冊分)とそれぞれ2000万円以上だったにもかかわらず、市教委は議会の承認を経ないまま買い入れていた。3年度分の合計は約9261万円(5362冊)に上る。

 教育委員会の説明によると、昨年11月に他の自治体から指導書購入と議決について照会があった際、2020年度の条例違反が判明したが、組織的な検討や対応をしなかった。今年5月、他の自治体で同様の事案が発覚した報道を受けて過去の契約を確認したところ、2015年度と2024年度の違反が新たに分かった。

 原因について市教委は「昨年11月の時点で法令に違反しているという認識はあったが、議会で追認が必要という認識が組織的になく、5月の報道で初めて知った。担当課以外の職員によるチェック機能も働かなかった」と説明。再発防止策として事務マニュアルの見直し、事務説明会や研修における注意喚起などを挙げた。

 条約に反して契約した責任を明らかにするため、市長、副市長、教育長の給料をそれぞれ1カ月間、1割減額するとともに、関係職員については調査のうえ必要な措置を講じるとしている。

 全員協議会の冒頭、小林洋子市長は「行政運営上あってはならない事態であり、深くおわびします」と陳謝、青木由美子教育長は「二度とこのような事態を生じないよう再発防止に向けて取り組んでいきたい」と述べた。

 同様の事例は今年5月以降、武蔵野市や府中市などでも発覚している。

全員協議会(6月24日)

【参考情報】
・議会の議決を経ずに行った教師用指導書の買入れについて(小平市

Loading

By 片岡義博

共同通信社の文化部記者として主に演劇、論壇を担当。福岡編集部、文化部デスクを経て2007年にフリーに。書籍のライティングと編集、書評などを手掛ける。2009年から小平市在住。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP