東久留米市学園町にキャンパスを置き、2021年に創立100周年を迎えた自由学園で、今春から開学以来の改革が始まっている。中等部・高等部の男女共学化と、高等部卒業生だけを受け入れてきた最高学部(大学部)の外部進学者募集だ。ともに100周年を機に掲げた「共生共学・共生共創の学校づくり」に基づいている。改革の動きや思いを今年4月に就任した更科幸一(さらしな・こういち)学園長に聞いた。(カバー写真:更科幸一学園長。「6月は沖縄を思い、戦争を考えてほしいので」とかりゆしウエアを着用している)

 ジャーナリストだった羽仁もと子・吉一夫妻が、キリスト教を土台とした人間教育を目指して創立した自由学園。その第7代学園長に就任した更科学園長は1971年、東京都板橋区生まれ。幼稚園から自由学園に入り、最高学部まで在学。その後、東京理科大を卒業し、都内の私立高校教員を経て2003年に自由学園に着任。男子部校長、女子部校長などを務めてきた。就任の抱負を聞くと―。

 「幼稚園から最高学部まで、自由学園の思想に基づいた一環教育に立ち返る。基本は羽仁もと子・吉一が大切にした、現代社会の課題に必要な教育として、子どもたちがどういう学びをすればいいかを考えていくことに尽きます」

 さらに、「今の日本で学校や教育も立身出世のための学びになっていないか。それが本来の人の生き方、幸せ、豊かさなのか。そうした流れに少しずつ抗いながら、子どもたち、保護者、地域の方たちと共に学び、よりよい社会を創っていきたい」と語った。

 その実践の一つが4月からの男女共学化。1935年の男子部設立以降、長く別学だったが、100周年で学校改革の柱の一つとした「共生共学」の、人と人の共生、自然との共生、神との共生を大事に、真に平和な社会を創造していくという考えから男女共学が導入された。

 具体的には、男子部、女子部を共学化し、中等部・高等部に▷高等部に1~3年混合の縦割りクラスを新設▷1学年2~3クラス編成に▷授業の一環の昼食調理は男女で異なっていた仕組みや頻度を調整▷制服は男子だけ、女子は式服以外自由だったが、男女とも来年度から新たに導入する式服以外は自由に―など。

 共学化から約3カ月。更科学園長によれば、ある女子生徒は共学化が嫌で、学校をやめようかと悩んでいたが、1カ月半で「学校ってこんなに楽しいんだ」と思うようになったという。

「いろいろな人がいて、いろいろな考え、思いがあることを知り、学んでいると話していました。もちろん男女の文化が入り混じるなかで葛藤している人もいる。先生たちも常に苦悩、葛藤のなかにいる。でも、だからこそ、物事をしっかり自分の頭で考え、社会をよくしようという人が育っていると思います」

 別学の経験がない中等部1年生だけは混乱なく、それ以外の学年はまだ共学化に戸惑いも見られるというが、それも徐々に浸透しつつある。

 共学化に続き、5月には最高学部(4年課程、2年課程)で2025年度から外部進学者の募集を開始することが発表された。こちらも「共生共学・共生共創の学校づくり」の一環で、「最高学部は自由学園の教育を受けた人が最後の学びをする場として意味があったが、共生共学の考えからは閉鎖的すぎる」と決断。これまで女子に限定されていた2年課程の募集も男女に拡大される。

 最高学部は学校教育法1条における大学(1条校)ではなく、各種学校にあたり、大卒資格はない。それでも、「だからこそ大胆にいろいろなチャレンジができる強みがあり、就職予備校でなく、人が生きていくなかで本当の学びとは何かを考えてカリキュラム化している。先々のためでなく、今を生きる学びができる学校です」と更科学園長は力を込めた。

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By 倉野武

1961年、東京生まれ。20年前から西東京市在住。新聞社で30年以上の取材経験があり、近年は地域への関心を高めている。趣味は西東京市のいこいの森公園でのランニング。

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