中学校全員給食に向けた基本協定締結式。左から渡部尚東村山市長、「ハーベストネクスト」の脇本実社長、岡本一朗学校給食部部長=7月19日、東村山市役所

 東村山市は7つの市立中学校で2026年度から全員への給食を実施するため7月19日、給食を提供する業者との間で契約に向けた基本協定を締結した。東京都内では学校給食の無償化が進む中で後れを取っている同市でも無償化を実現するための“地ならし”を図る意味がある。

 東村山市立には15小学校と7中学校があり、小学校は自校内に調理施設を持って給食を提供している。中学校は「スクールランチ」という弁当を事前に申し込むと市内の業者が学校まで届ける制度を運用しており、約6割の生徒が利用している。残りは家庭から弁当を持参する。

 昨年の市議会で「温かい給食を全生徒に」と求める陳情が全員賛成で採択されたことなどを受けて同市が検討を進め、このほど大鍋で調理した温かい食事を学校に運搬して提供する「食缶方式」を請け負う業者が決まった。19日、東村山市役所で渡部尚市長も出席して市と提供業者「ハーベストネクスト」(脇本実社長、本社・横浜市)との間で基本協定が締結された。

 今後提供施設の整備や、生徒・保護者側の説明などを経て2026年度9月からの実施を目指す。これにより約25年間続いてきた中学校での「自前弁当」「スクールランチ」2本立て選択制がなくなる。市教委は「給食費をいくらにするかなどは決まっていないが、これまでの制度より家庭の負担が増えることはない」としている。

 給食費無償化の動きが全国的に進んでおり、東京都では23区すべてのほか市町村部でも新年度にかけて導入が進んだ。東村山市は「財政負担が大きすぎる」として導入のめどが立っておらず、市教委によると中学校で選択制方式を取っているのは東久留米市、国分寺市と併せた3市だけになったという。北多摩北部地域で言うと清瀬市も無償化のめどが立っていない。

 渡部市長は今年5月の記者会見で「完全無償化には都が半額補助しても、年3億円かかり財政的に厳しい。区市町村がほぼ無償化を果たそうとしている中で誠に心苦しいが、まずは小中学校で全員が温かい給食を食べられるようにして、その上で無償化に向けて検討を進めてゆきたい」と述べていた。

 19日の締結式で渡部市長は「全員給食を実現するためには民間業者にお世話になるしかないが、このたび素晴らしい提案をいただきありがたい。無償化への期待も大きいが、まずはその大前提として全員給食を進めたい」と述べた。

 また「ハーベストネクスト」の脇本社長は「東村山市には2001年6月から弁当を提供させてもらっている。温かい給食を食べて喜ぶこども達の顔を見るのが楽しみ。地産地消や食育への協力にも努力したい」とあいさつした。

Loading

By 飯岡志郎

1951年、東京生まれ。西東京市育ちで現在は東村山市在住。通信社勤務40年で、記者としては社会部ひとすじ。リタイア後は歩き旅や図書館通いで金のかからぬ時間つぶしが趣味。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP