多磨全生園でハンセン病回復者の平沢保治さんに取材するスタッフ(文化放送提供)

 東村山市の国立ハンセン病療養所「多磨全生園」で暮らす回復者3人の声でつづったラジオ報道スペシャル番組「全生園の柊(ひいらぎ)」が10月25日夜7時から1時間、文化放送で放送される。

 ハンセン病回復者は97歳と75歳の男性と90歳の女性。パーソナリティの長野智子さんが全生園を訪れて行ったインタビューに対して入園時のいきさつから過酷な療養所生活、人権を求めた激しい闘争、特効薬によって完治した後でも根強く残る差別の実態などを生々しく語っている。

 患者の強制隔離を規定したらい予防法は1996年に廃止され、2001年には熊本地裁が「隔離政策は違憲」とする判決を出し、国は控訴を断念した。しかしさまざまな形での社会的偏見と回復者の苦しみは今も続いている。

 国立ハンセン病療養所は全生園を含めて全国に13あり、ハンセン病の治療を終えて完治した「回復者」の数は5年前の1211人から2024年5月末で710人に減少。平均年齢は88・4歳と高齢化している。

 番組のタイトルにある柊は葉に固いとげがあり、かつて全生園を取り囲む垣根として植えられていた。皮膚に傷がつくことを極端に恐れる患者にとって柊の垣根は脱走を阻み、内と外を隔てる鉄条網の役割を果たしていた。

 長野さんは以前から差別の問題に関心を持っていたといい「ハンセン病回復者の方とはこれまでお会いする機会がなかったので、積極的に番組をお引き受けしました。お話に衝撃を受け、どこまで寄り添えているかずっと自分に問い掛けていました」と振り返る。

 番組プロデューサーの関根英生さんは小平市在住で「地元に近い全生園を番組で取り上げたいと考えていたがコロナ禍もあってなかなか果たせなかった。長きにわたり人権を拒絶され、いわれなき差別と偏見、誤解と迷信に翻弄され生きてきたハンセン病回復者の声を後世に残したい。そして今も起こりうる問題、あり得る問題として聴いてもらえたらと願っています」と話している。

【関連情報】
・云われなき差別に翻弄された元ハンセン病患者の真実に迫る 文化放送報道スペシャル 『全生園の柊』10/25(金)午後7から放送(文化放送

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By 飯岡志郎

1951年、東京生まれ。西東京市育ちで現在は東村山市在住。通信社勤務40年で、記者としては社会部ひとすじ。リタイア後は歩き旅や図書館通いで金のかからぬ時間つぶしが趣味。

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