西東京市の多摩六都科学館で10月13日、東京大学准教授の矢守航さんが「最先端農業の秘密! これであなたもトマト博士!」と題した講演会を行った。会場にはトマトや農業に興味を持つ親子連れ20人ほどが集まり、熱心に耳を傾けていた。
矢守さんは西東京市の東京大学生態調和農学機構(東大農場)で植物の光合成に関する研究を行っており、研究の中で栽培したトマトの写真をまとめた図鑑を今年の7月に発売した。
矢守さんのグループが出版したのは「美しいトマトの科学図鑑 (東京大学の農場で野菜や果実を育ててみた)」(創元社)。自身の研究室が東大農場内の温室で栽培した50種類のトマト品種について写真を掲載、うまみや酸味といった味の違いや、季節による糖度の変化などの研究成果も掲載している。
講演の中では最新の研究成果も披露。矢守さんらはトマトの野生種の中に独特な香りを発する品種を発見し、その品種が害虫被害を受けにくいことに着目、香りが害虫を寄せ付けない効果を持つことを証明した。会場に野生種と一般的な栽培品種を持ち込み、参加者一人一人が実際に葉に触ってにおいをかぐことで、違いを確かめる体験コーナーもあった。
また矢守さんたちは、野生種の中に一般的な栽培品種よりも光合成能力が優れたトマトを発見。この優れた特性を栽培種に導入すれば、トマトの生産性が飛躍的に向上する可能性があると話した。
さらに最先端農業の例としてLEDを活用した植物工場を紹介。現在の植物工場では主にレタスなどの葉物野菜が栽培されているが、矢守さんたちはトマトなど、葉物以外のさまざまな野菜の栽培にも取り組んでいる。
講演の最後には、子どもたちからのたくさんの質問にも、丁寧に答えていた。
矢守さんは「トマトは好きな野菜ランキングの上位に入る野菜。トマトや農業の最先端の研究の一端に触れて頂き、そのような研究が西東京市の東大農場で行われていることを知って頂ければ」と話した。
【関連情報】
・美しいトマトの科学図鑑(創元社)
・矢守航さんの研究室(HP)