西東京市庁舎

 収入や生活費などお金のことが不安 ──。西東京市が16歳から29歳を対象に実施した「西東京市若者調査」で現在の不安や悩みを尋ねたところ、そんな回答が最も多く寄せられた。若年層の貧困が社会問題となる中、若者が発するSOSをどう受け止めていくかがあらためて問われている。

 調査は、子ども・若者の成長や子育てを支援する地域社会づくりを目指す「西東京市子ども・若者ワイワイプラン」策定に向けて若者世代を取り巻く現状や課題を把握するために初めて実施。西東京市に住む16歳から29歳までの男女4000人を対象に昨年6月、ウェブで回答を集めた(回収率11%。小数点以下四捨五入。以下同じ)。

 質問項目は「居場所」「他社との関わり方」「社会参加」「若者支援」「結婚・出産」など多岐にわたる。「自分の将来に希望を持っているか」という質問に対して「希望がある」「どちらかといえば希望がある」という回答が合わせて76%を占めたが、年齢層別に見ると「希望がある」と答えた割合が「16〜19歳」35%、「20〜24歳」33%、「25〜29歳」25%と加齢とともに下がっていった。

 年齢が上がるに従って将来に希望を失っていくのはなぜか。「現在の不安や悩み」を尋ねたところ、「収入や生活費、奨学金の返済などお金のこと」が48%と最も多かった。次いで「仕事や職場のこと」が36%、「進学・就職のこと」が35%。「お金」についての不安は「16〜19歳」20%、「20〜24歳」42%、「25〜29歳」66%と年齢が上がるに従って急増する。逆に「友人や仲間との人間関係」や「性格や癖」に関する不安や悩みは年齢とともに減っている。

 「若者のために西東京市に必要な取り組み」を聞いたところ、「お金のことを心配することなく学べる機会の充実」が41%と最も多く、その割合はやはり年齢が上がるとともに上昇している。そのほか必要な取り組みは「自由に過ごせる場所を増やす」が40%、「技術や資格取得の支援」が28%だった。

 このほか目立った数値としては、「他者との関わり方」で「地域の人」との関係を聞くと「かかわりがない」との回答が84%で、「家族・親族」(3%)、「学校や職場・アルバイト関係の人」(13%)、「趣味や習い事関係の人」(43%)、「SNSなどのインターネット上での友人や知り合い」(51%)に比べて突出して高かった。

 また仕事以外で参加している地域の「まちづくり活動」を聞いたところ、「ボランティア」や「地域イベント」などはいずれも5%以下で、86%が「どれにも参加していない」と回答。年齢や仕事の別に関わらず、若者全体の地域コミュニティ離れが明確にわかる。まちづくり活動に参加に要するものとして「交通費や会場使用料などの経費の支援」とする回答が44%と最も多く、ここでも経済的条件がネックになっていた。

 調査結果を受けて子育て支援課は「市はこれまで学生等応援給付金などで若者を経済的に支援してきた。今後は奨学金などの制度設計を含めて検討していく必要がある。ワイワイプランの計画期間は2025年から10年間なので、中間地点で見直しのための若者調査を実施することが考えられる」と話している。

【参考情報】
西東京市若者調査結果報告書(西東京市)

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By 片岡義博

共同通信社の文化部記者として主に演劇、論壇を担当。福岡編集部、文化部デスクを経て2007年にフリーに。書籍のライティングと編集、書評などを手掛ける。2009年から小平市在住。

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