自由学園(東久留米市学園町)は、この秋、高等部2,3年生を対象にしたインターンプログラム「飛び級社会人」を本格スタートした。166人が45の企業・団体でのインターンを通じて、生徒自身の将来を考え、「よりよい社会」をつくるための実践を行う。10月23日にオープニングセレモニー(出発式)が行われ、生徒たちの挑戦が始まった。

■「共生学」の集大成

 自由学園は1921年の創立以来、「よりよい社会をつくる人を育む」ことを目指し、学校をひとつの社会として学びを続けている。とくに2021年の創立100周年を機に設置されたのが、中学1年生から高校3年生までの必修科目「共生学」。高1までに実社会の問題への関心を育み、集大成としてキャンパスでの学びを実社会で実践すべく高2、高3で「飛び級社会人」に参加する。一昨年からトライアルをはじめ、昨年は高校2年生80人が22の企業・団体でインターンを体験。企業側からも「彼ら(生徒)を通して、原点回帰の気づき・思いが駆け巡り、有意義な時間をすごさせていただきました」などの声が寄せられた。

 本格スタートの今年は高2、高3の全員166人が参加。10月30日から来年2月19日までの約4カ月間、定期コースは原則週1日で、計13日前後、短期コースは原則約10日の集中日程で、学び場となる企業・団体でさまざまな体験と出会いを経て、リアルな社会課題の解決に取り組む。

 受け入れ先は、大手企業からスタートアップ、NPO法人など、業種も飲食、保育、宿泊、出版、通信、メーカーをはじめ多様な45の企業・団体。場所は東京近郊、学園周辺の地域の企業・団体が中心だが、なかには北海道、長野、山形、伊豆大島、千葉で活動するグループもある。

■10年後、20年後の力に

 出発式は生徒、企業・団体の関係者も参加して23日、同学園記念講堂で開催。学園と共にプログラムを推進してきた博報堂ケトルの原利彦COOは「こういうことをしている学校は日本にはない。自信を持ってやってほしい」と生徒たちにエール。更科幸一学園長は「アクシデントやトラブルもあるかもしれないが、このプログラムを経て10年後、20年後、生徒たちが世の中に力を出せることがきっとあると思う」と企業・団体への感謝も伝えた。

 参加する生徒を代表して高2の上提(かみさげ)ゆめのさんは「このプログラムを通じて人を知り、職業を知り、社会を知りたい。そして自分らしい力の出し方を一人一人それぞれ見つけることができればと思います」、高3の北川山見(やまみ)さんは「働くということはどういうことかを知る機会。用意されたミッションに応えることはもちろん、チャレンジする行動力を持ち、活動に臨んでいきたい」などと抱負を述べた。

 生徒や企業・団体関係者、学園スタッフも入った記念写真を撮影後、企業・団体ごとに顔合わせ。プログラムの説明をする受け入れ先関係者を前に、生徒たちは緊張の面持ちもあったが次第に打ち解け、和気あいあいとした空気に包まれていた。

■絵本読み聞かせ、演劇裏方、キッチン運営も

 担当の山本太郎学園長補佐は「飛び級社会人は、就職支援など将来を絞っていくのではなくむしろ視野を広げていくためのものでありたい。(現高3が)昨年度の経験で感じた自分の新たな一面やその分野への気づき、深まり、違和感などを生かして再チャレンジできるようプログラムを組みました」と説明する。

 出発式終了後、話を聞いた高3男子は、将来の夢がミュージシャンで、昨年はラジオ局、今年は大手出版社、講談社でインターン。子供たちに絵本の読み聞かせをする慈善活動などに参加する予定で、「子供たちの活字離れ、読書離れを悲しく思っているので、読み聞かせで本に興味をもってほしい」と意欲的。

 高2女子は、まちづくり事業を手掛けるフラットデザイン/シェアキッチンMIDOLINO_(ミドリノ)へ。シャッター街にあるシェアキッチンの企画・運営を行い、「コロナ禍以降、人同士のつながりが薄れている。街の人たちが集まる場所、サードプレイスになるようなコミュニティーづくりを学びたい」と張り切る。

 高2の別の女子は、北海道のフラノ・クリエイティブ・シンジケートで脚本家、倉本聰さんの演劇づくりの裏方作業に携わる。「自炊もあり、夜型の生活で体力が心配ですが、役者さんたちと一緒に過ごすのも楽しみ」と目を輝かせていた。

【関連情報】
・自由学園 中等部・高等部(公式サイト

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By 倉野武

1961年、東京生まれ。20年前から西東京市在住。新聞社で30年以上の取材経験があり、近年は地域への関心を高めている。趣味は西東京市のいこいの森公園でのランニング。

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