東村山市は国立ハンセン病療養所多磨全生園(同市青葉町)の将来構想をまとめ、3月27日発表した。86人にまで減少している入所者が安心して暮らし続けることができるよう医療、看護、介護の維持・向上を保障するとともに、ハンセン病問題の普及啓発や地域との共生・交流の促進を図る。
全生園は1909年に公立療養所第一区府県立全生病院として設置されたのを起源とし、ハンセン病に対する社会的偏見と差別を背景に患者を強制的に隔離する東京都唯一の国立ハンセン病療養施設として歴史を経てきた。一時は1,500人以上を数えた入所者は、戦後特効薬の普及で完全治癒が可能となったこともあり年々減少した。現在の入居者の平均年齢は88.7歳。全生園の面積は約35万平方メートルで東村山市の約2%を占めている。
高齢化してゆく入所者の生活支援と施設の今後の在り方をどうするかが課題となっており、全生園、入所者、東村山市の関係者らが将来構想委員会を立ち上げ、2022年以来検討してきた。
最重要の理念として、入所者が心の安らぎを得て療養できる環境を保持し、生きている充実感が満たされるように医療、生活の充実した施設としてあり続けることを掲げた。
また入所者自治会が2002年に打ち出し、その後東村山市議会も賛同した「人権の森」構想をさらに促進することが盛り込まれた。同構想は園内の豊富な樹木と史跡建造物を保存し、園全体をハンセン病記念公園として残そうというもので、財源確保の問題についても今後検討する。
さらに地域開放・共生については園内を3つのエリアに分け、入所者が生活、療養し基本的に立ち入りが制限されるエリア以外の「地域交流・自然公園エリア」「史跡・教育エリア」では、市民のニーズ把握や園側との調整を踏まえて地域への施設開放、活用を実現したり、全生園の歴史や人権の尊さを学びながら散策したりできるような可能性を追求する。
今後の課題は予算措置を含む計画の具体化だが、あくまでも国の施設なので、東村山市としては広く市民に構想を知ってもらう活動と並行して、今後全生園、国と協議、働き掛けを進めたいとしている。
渡部尚・東村山市長はこの日の記者会見で「筆舌に尽くしがたい苦難を味わった入所者が自分たちで守ってきたこの施設を後世に残したいとの強い思いを市としてもしっかり受け止めたい。誤った政策を進めた国が本来責任を取るべきだが、患者に対する差別や偏見に基づき強制隔離を実行してきた地元自治体も全く無罪ではない。我々も将来構想には一定の責任を果たしたい」と述べた。

