ハンセン病への差別を背景にして起きた「菊池事件」の再審判断が1月28日に出されるのを前に、1月17日、東村山市栄町のサンパルネで同事件裁判の不当性を訴えた映画「新・あつい壁」の上映会が開かれた。
菊池事件は1952年、現在の熊本県菊池市で起きた殺人事件。当時30歳の男性が起訴され、死刑判決が確定して1962年9月刑が執行された。
男性はハンセン病への罹患(りかん)を理由に療養所への入所を勧告されたことを恨んで村の職員宅にダイナマイトを投げ込み軽傷を負わせたとして懲役10年の刑が確定し熊本刑務所菊池医療刑務支所に収容された。男性は同支所を脱走、警察などが捜索中の1952年7月、ダイナマイト事件で被害者となった村職員が惨殺体で発見された。
数日後男性が発見されて殺人容疑で逮捕された。裁判はハンセン病療養所内に設置された「特別法廷」で行われ、男性は無罪を主張したにもかかわらず、正当な弁護や公正な証拠調べがなされないという差別的な審理が進められた。
一審での死刑判決後、事件捜査と裁判の不当性を訴える運動が広がりを見せ、最高裁での確定後、再審請求が繰り返されたが第3次請求が却下された翌日の1962年9月14日死刑が執行された。
1996年の「らい予防法」廃止、2001年のハンセン病国賠訴訟国側敗訴などを受けて、菊池事件への注目が再び広がり、死刑執行された男性を「F氏」として名誉回復が運動の目標となった。2020年、熊本地裁は「特別法廷」が違憲との判断を下し確定した。2021年に出された第4次再審請求では裁判自体が憲法違反だったことを根拠に裁判のやり直しを求めており、2026年1月28日に熊本地裁で判断が示される予定。
「新・あつい壁」は2007年公開の中山節夫監督作品で、「フィクション」と断っているが、菊池事件に題材を取っている。たまたま事件を知った若いルポライターが熊本現地に取材し、ハンセン病回復者ら関係者から証言を集める中で事件捜査や裁判への疑問を深め、差別の理不尽さに目覚めていく過程を描いている。
この日の上映会は「国民民主党東京20区総支部」の主催だが、国立ハンセン病療養所多磨全生園や国立ハンセン病資料館を抱える東村山市の市議会議員が超党派で支援した。映像冒頭にはハンセン病資料館も登場し、参加者らは熱心にスクリーンを見つめていた。
上映に先立ち、全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)事務局長を務めていた故藤崎陸安(みちやす)さんの妻で多磨全生園にある食堂を切り盛りする藤崎美智子さんがあいさつ。「みっちゃん」と呼ばれている藤崎さんは「夫はF氏の名誉を回復しなければハンセン病問題は終わらないと常々言っていた。皆さんの力を借りながら再審が開始できるようお願いします」と述べた。

![]()

