参加者で埋まったシンポジウム会場(加藤嘉六さん撮影)

 シンポジウム「世界から見た玉川上水」が、4月5日、小平市中央公民館で開かれた。会場(定員160人)は、事前申し込みで満席となり、100人がオンラインで視聴。専門家らが、海外での事例などを披露し、玉川上水の国際的な価値について意見交換した。「お金に換算できない玉川上水の真の価値を見直し、区や市を超えて官民一体で考えるべきときではないか」として、市民団体が企画した。

 最初に、進行役で昆虫学者の新里達也氏が、多摩地区から新宿方面に広がる市街地に緑の回廊が際立つ空撮動画を披露した。

 『水都東京』(筑摩書房)の著書がある陣内秀信・法政大名誉教授(イタリア建築史・都市史)は、「玉川上水が世界に誇る価値と東京にとっての重要性」と題して講演。イタリアのローマやヴェネツィアの上水道など、イタリアの上水道と玉川上水を比較した。日本では、江戸時代以前から、国内各地で水路建設技術が蓄積されていたことを紹介し、「土木インフラ歴史遺産」としての玉川上水を高く評価した。

 玉川上水は、江戸時代の1600年代に掘削された、長さ43キロの上水路。多摩川を水源に江戸の飲み水を担った。高低差92メートルは、100メートルあたり21センチほどにあたり、緻密な勾配計算など、当時の優れた土木技術がうかがえる。上下流部を除く30キロは国の史跡で、「世界遺産登録を目指す」動きもあるという。

 陣内氏は、玉川上水の開通により、流域での農業が盛んになり、武蔵野台地に人が住みやすくなったと分析する。「現在は東京の住宅密集地を貫く緑の帯が、貴重な自然環境を誇る」という。

玉川上水の国際的価値について意見交換する登壇者(主催者提供)

 石川幹子・東京大名誉教授は、世界各地で公園緑地の設計や自然環境保護に携わる。石川氏は、中国四川省の世界最古の灌漑用水路とされる文化遺産やブータンの事例を紹介。震災などの災害時に、「市街地の水流が果たす役割」を指摘した。

 玉川上水両脇の雑木や草地に、早春の土手などに生えるアマナや釣鐘型の花を垂らすホタルブクロなどの多年草が観察されることを報告。他地域では見られなくなった絶滅危惧種も少なくなく、「玉川上水は、生物多様性の宝庫」として、「江戸、東京400年の文化遺産としての玉川上水」と位置づけた。皇居外濠に玉川上水と荒川から流水を引き込む今後の動きも紹介した。

 地元市民団体のリー智子さんは、植物や昆虫、野鳥などの観察会活動を報告。「玉川上水の自然は、生き物たちがつくったまさに、『生物多様性の杜』。お金に換算できない価値を見直し、本当に守らなければならないものは何なのかを考えるきっかけにしたい」と話した。
 玉川上水をまたぐ幅36メートルの都道が建設中だ。会場では、着工前の都知事の現地視察と生物多様性や景観保全などの調査を求める署名用紙も配られた。

署名チラシ(表)

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By 吉井亨

日本語教師。元新聞記者。

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