東久留米市の「柳窪の古民家と屋敷林を守る会」は3月3日、同市西端の柳窪地区の景観や文化的価値をもっと知ってもらおうと見学会を開催した。300人を超える応募の中から、抽選で選ばれた33人が参加し散策を楽しんだ。(カバー写真:国登録有形文化財「村野家住宅」の主屋)
同市の西端にある柳窪地区は江戸時代から明治初期に建てられた古民家7棟、白壁の土蔵20棟、屋敷林などが点在して残っているため「緑の島」と呼ばれ市民に親しまれている。武蔵野の面影が色濃く残る見所満載の土地だ。
見学会の応募者は市内や西武線沿線からだけでなく、中央線沿線の昭島市や立川市など10市に及んだ。同会代表の柘植正憲さんは「予想をはるかに上回る応募者で、抽選に外れた人たちに謝るのが大変でした。あと7~8回は見学会をしないと外れた人たちに申し訳ない」と話した。
見学会は、柳窪特産の柳久保小麦の畑からスタートし、江戸時代から続く農家・奈良山園の畑へ。ここでは伝統野菜の栽培や農業と柳窪の景観の一体化めざす取り組みなどを聞いた。
ケヤキ並木に挟まれた未舗装の小道を歩いて、国の登録有形文化財「村野家住宅」(顧想園)へ。丈高い木々に囲まれた顧想園には、約4千坪の敷地に1838(天保9)年に建てられた主屋や薬医門(1881年=明治14の建築)など7棟の国の登録有形文化財がある。1軒の家で登録有形文化財が7件もあるのは珍しい。
薬医門の横で園主の村野美代子さんと娘のあやさんが出迎え、顧想園の見所などを丁寧に説明してくれた。見学者たちはここから3班に分かれ、顧想園の広い屋敷地をゆっくり散策した。
最後に黒目川の源流域へ。ここは社寺林や屋敷林が寄り集まった樹林地で、約1.4ヘクタールが東京都の柳窪緑地保全地域に指定されている。ケヤキ、シラカシ、ムクノキ、イヌシデなどからできている雑木林で、貴重な動植物も繁殖している。
見学者たちは古民家の奥住家住宅で昼食、豚汁をふるまわれて和気あいあいの雰囲気の中で見学会を終えた。
古民家巡りが趣味という下村みどりさん(74)は昭島市から参加。「古民家は周囲の屋敷林や農地と一体化したまま残すことに意味があることを学びました。参加してよかったです」と感想を述べた。
柘植さんは「柳窪には雑木林や屋敷林に囲まれた古民家や土蔵も残っています。この歴史的な文化遺産、景観を後世に伝えていくには、古民家の保存、活用を通して地域の活性化につながる活動も必要になります。市にはこうした考えを伝えていますので、行政とも協力して粘り強くこの活動を続けていきます。」と力強く締めくくった。
柳窪の古民家と屋敷林を守る会では常時会員を募集している。入会申し込み・問い合わせは代表の拓殖さん=電090-7637-2989、メールtuge.aa@triton.ocn.ne.jp=へ。会費は年間2千円。
【関連情報】
・顧想園(HP)