合気武術の達人だった故佐川幸義氏の道場跡地に市民との協働でつくった「小平市立合気公園」が完成し、3月23日に開園セレモニーが開かれた。市が実施したクラウドファンディングで整備費を確保。公園づくりに参加した地域住民や門人たちは「合気の聖地にしたい」と思いを新たにしている。(カバー写真:合気公園の日本庭園で遊ぶ子どもたち)

 公園があるのは東京学芸大学近くに位置する小平市上水南町2丁目の住宅街の一画。合気道を創始した植芝盛平の師で大東流合気柔術の創始者・武田惣角の直弟子、佐川幸義氏(1902〜1998年)が55年に宗家として自宅と道場を構え、多い時は300人を超す門人を擁した。歴史小説家の津本陽さんによる評伝『深淵の色は 佐川幸義伝』( 実業之日本社文庫)によると、佐川氏は武術の高段者を一瞬で弾き飛ばす不世出の達人だったという。

 佐川氏の死後、遺族が「道場跡を公園に活用してほしい」と2016(平成28)年、約1150平方メートルの土地と約2900万円を小平市に寄付した。市は当初、土地の約3割を売却して整備費に充てる計画だったが、近隣住民や門人らが「旧佐川邸の公園化を考える会」を結成し、「できる限り土地を売却せず公園を整備してほしい」と市側に要請した。

 方針を転換した小平市は、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングで全国から約1600万円の寄付金を集め、都の補助金約2200万円と全体の約1割の土地売却費で整備費を確保。「考える会」が近隣住民らとワークショップを重ねて作成した計画案を基に公園づくりを進めた。

 「地域コミュニティの拠点」「合気の聖地」といったコンセプトに基づく公園は、佐川氏の顕彰碑やベンチ、植物棚を設置し、旧佐川邸にあった日本庭園の自然石を生かした空間となっている。

 門人たちが集まった開園セレモニーには小林洋子市長、松岡あつし市議会議長らが参加。 除幕式の後、佐川氏に20年間師事した大東流合気佐門会理事長の木村達雄筑波大名誉教授が「先生の合気は95歳で亡くなる前日まで進化を続け、他とは全く次元が違うレベルだった。本当にすごい先生だった」と振り返った。

 「考える会」代表の岡江伸子さんは「佐川先生の足跡を小平の歴史として残したいという思いで近隣の住民や門人の方々、市の力を結集してできた公園です。これから50年、100年と大事に守っていきたい」と話した。

【参考情報】
・旧佐川邸の公園化を考える会(HP
・上水南町二丁目に新設する公園整備に関する説明会(HP

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By 片岡義博

共同通信社の文化部記者として主に演劇、論壇を担当。福岡編集部、文化部デスクを経て2007年にフリーに。書籍のライティングと編集、書評などを手掛ける。2009年から小平市在住。

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