大規模災害時の生活用水を確保するため井戸の調査と普及を進めてきた小平市のNPO法人「小平井戸の会」は、このほど東京都23区・多摩26市の自治体を対象にした災害用井戸に関するアンケート調査の結果をまとめた。区部の公立公園や避難所などに公共の災害用井戸が増加し、区部に比べて市部で整備が遅れていることが分かった。(写真は、小平井戸の会通常総会、5月11日、市立中央公民館)
井戸行政のアンケート調査は2018年に続いて2回目。昨年11月から今年2月にかけて都内の計49自治体の担当部署に、公共(避難所・公園など)と民間(個人・企業・病院など)別に「井戸数」のほか、手押しや電動といった「揚水手段」、飲料用か生活用水用かなどの「用途」を尋ねた。
公共の災害用井戸数の変化を第1回調査結果と比べてみると、文京区(16→54)、墨田区(20→32)、品川区(3→46)、葛飾区(13→32)、江戸川区(127→162)、小金井市(1→5)など、区部での増加が目立つ。阪神・淡路大震災から能登半島地震まで大規模災害時の断水による水不足が深刻な被害をもたらし、井戸の有用性に対する認識が自治体でも深まっていることがうかがえる。
公共の災害用井戸を1基も持たない自治体は、小平市を含めて1区9市と全体の2割。市部は区部に比べて公共の災害用井戸の整備が遅れ、北多摩北部では小平市と東村山市が0基、清瀬市が29基、東久留米市が1基、西東京市が16基だった。
また自治体によって対応に大きな差があり、江戸川区は区内の全小中学校に災害用井戸を設置。国分寺市は市内24カ所の公園に井戸と手押しポンプを設け、市民に開放している。調査結果の一部は、小平井戸の会が4月に発行した啓発用冊子「災害に有効な井戸」(改訂版)に掲載している。(冊子希望者には1000円で頒布。連絡先は小平井戸の会=メールアドレス)
同会は年内に全国の政令指令都市20自治体を対象に同様の調査をするとともに、都内で災害用井戸を積極的に整備している約10自治体を訪問して聞き取り調査を実施する予定。金子尚史理事長は「小平井戸の会は3月に国土交通省などが主催する日本水大賞・市民活動賞を頂き、防災用井戸に関する全国初の市民活動として認められた。今後は各地域と連携し、この活動を全国に広げていきたい」と話している。
【参考情報】
・NPO法人小平井戸の会(HP)