人類拡散の足跡をたどる「グレートジャーニー」で知られる探検家で医師の関野吉晴さんが初監督したドキュメンタリー映画「うんこと死体の復権」が8月の劇場公開を前に7月20日夜、小平中央公園の雑木林で先行上映される。自然界におけるいのちの循環を見つめる人々を捉えた映像作品らしく野趣あふれる試みだ。(カバー写真:映画の1シーン((C)2024「うんこと死体の復権」製作委員会」)

 関野さんはアフリカから南米最南端に至る人類拡散の足跡を逆ルートでたどる「グレートジャーニー」を1993年から足掛け10年で踏破。武蔵野美術大学教授時代の課外ゼミでは学生とカレーライスの食材となる米や野菜、肉を種や雛から育て、器やスプーンも作った記録が映画にもなった。

 南米アマゾン奥地の狩猟採集民と共に暮らして関野さんが知ったのは、生き物の糞や死骸の重要性だった。それらは虫や微生物によって分解されて土となり、そこで植物や苔、菌類が育って動物の栄養になる。

 生き物が織りなす循環の世界に「持続可能な社会」実現のヒントを見出す関野さんは、現代人が忌み嫌う「うんこと死体」やそれらを食べる生物に目を凝らす3人の活動を追ってきた。半世紀にわたり野糞をしてその変化を記録してきた写真家の伊沢正名さん、子どもたちとタヌキの糞に集まる糞虫の観察会をする保全生態学者の高槻成紀さん、ネズミの死骸やそれを食べる虫を描く絵本作家の舘野鴻さんだ。

 取材・撮影に4年をかけて今年3月に完成。「出演する3 人と私の共通の関心は生き物たちの循環。その循環に大活躍しているうんこと死体、それらを食べる虫たちを温かく見てくれるとうれしい」と関野さんはいう。

 先行上映する小平中央公園(小平市津田町)は豊かな動植物の生息地だ。現在、国の史跡の玉川上水を分断し、公園の雑木林の半分を削り取る都道整備計画が進んでおり、関野さんは計画に対する住民運動にも関わってきた。

 野外上映は雑木林の中に大スクリーンと100席・桟敷席を用意する。入場無料。午後7時開演で上映時間は106分。上映前には関野さんのあいさつがある。雨天の場合は翌日の同時刻に開演する。

 劇場公開は8月3日からポレポレ東中野ほかで。問い合わせは、合同会社きろくびと=メールまで。

【参考情報】
・映画「うんこと死体の復権」(公式サイト

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By 片岡義博

共同通信社の文化部記者として主に演劇、論壇を担当。福岡編集部、文化部デスクを経て2007年にフリーに。書籍のライティングと編集、書評などを手掛ける。2009年から小平市在住。

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