7月13日、ひばりが丘パークヒルズ(ひばりが丘団地)北集会場で、「能登を想い まちにわチャリティー上映会」が開かれた。主催したのは住民有志で構成する「能登応援・一献の会」。前半はドキュメンタリー映画「一献の系譜(2015 石井かほり監督)」の上映。後半は地元の酒屋さんの話を聞きながら日本酒を味わい交流する、という2部構成。集まった寄付金は全額公益財団法人ほくりくみらい基金「令和6年能登半島地震 災害支援基金」に寄付された。
■ 目と耳で能登の四季に思いを馳せる
開演に先立ち司会者が「皆さんこの辺りにお住まいですか?」と尋ねると、ほとんどの人が手をあげた。およそ40人。司会者は、地域の人たちがつながってできたチャリティー活動であることを話し、募金の協力、第2部への参加を呼びかけた。
続いて発起人である太田一幸さんからの挨拶。声が出にくい太田さんに代わりヘルパーさんが代読した。
金沢を訪れた際に輪島の酒店で珠洲の酒「宗玄」に出会ったこと、報道で知る能登の姿に心を痛めていた時に能登の杜氏の仕事ぶりを追ったドキュメンタリー映画が各地でチャリティー上映されていることを知り、「これ、やろう」と思ったこと、日本酒や蔵元の話をかねてより付き合いのあった酒店の店主にお願いしたこと、などが語られた。「メッセージや寄付金で応援の声を届けましょう、皆さまの思いが交錯し連鎖して『忘れない能登応援』へと連なれば幸いです」と締めくくった。
いよいよ上映。冒頭、画面いっぱいに広がる水田に風が吹き渡る。音を立てて揺れる稲が能登の光を跳ね返して輝く。印象的なシーンだ。雪景色、古来より続く神事、酒造りもその風土の中で長い年月をかけて培われてきたことが感じ取れる。四天王といわれる杜氏の生きざま、仕事にかける思い、気持ちの揺らぎなどが淡々と語られる。酒造りのメカニズムも解説され、その微妙なバランスに悩む姿も描かれる。上映時間102分。室内が明るくなると大きな拍手が湧き起こった。
■第2部 お酒飲みたくなったでしょ
第2部はひばりが丘で酒店「ESPOA はせがわ」を営む長谷川已代治さんの登場で始まった。長谷川さんは「皆さん、映画いかがでしたか?お酒飲みたくなったのでは」と語りかけた。自身も震源地に近い志賀町出身だと話し、今回の地震で被害を被った蔵元の実態を報告した。参加者は、休憩中に提供された石川県の酒「菊姫山廃仕込み(菊姫酒造)」と「手取川大吟醸(吉田酒造)」を手に熱心に話を聞き、その味を確かめていた。「『山廃仕込み』ってなんのことだかご存知ですか?」そんな話題も織り交ぜながら日本酒の奥深さを語り、「お酒を買ってくれることが一番の応援になります。見かけたら買ってください。」と話した。
会場には能登や今年の震災を伝える冊子などの資料が置かれていた。参加者は席を立って本を手に取ったり、お酒のおかわりをしたり、隣の人と話したり。会場はリラックスした雰囲気になってきた。映画の感想、能登の蔵人さんたちへのメッセージ、上映会の感想を尋ねるアンケートに答える姿も散見された。
会の最後は実行委員でもある秋山さんの話だった。1月1日、パートナーの実家である能登を来訪中に被災した体験を一問一答で話した。戸惑いながらもとった行動、余震の怖さ、水とトイレの準備がいかに大切か、真剣な面持ちで話す姿に参加者の注目が集まった。
■上映会を起点として
「チャリティ上映やろうよ」という太田さんの呼びかけに応えた住民16人が実行委員となった。キックオフは5月18日。自己紹介では、能登や地震災害へのそれぞれの思いを話した。「能登の復興支援の為に何かできることはないか」と思っていたと口々に語った。太田さんがこのエリアに越してきて約8年。少しずつ積み上げてきた地域のコミュニティの中で、太田さんの思いは受け止められた。あとは実行あるのみ。このエリアでまちづくりを手掛ける「まちにわ ひばりが丘」と「ひばりが丘・パークヒルズひばりが丘自治会」の協力を得、太田監督の元、実行委員がプレイヤーとなり、得意な分野で運営に携わった。
参加者からは多くの応援メッセージが寄せられた。
「蔵人さん、日本の伝統を「よろしくお願いします」日本酒好きな者より」という声に代表されるような「伝統、文化」をすたらしてはならない、という声が多かった。
「このような機会をいただき、あらためて自分でできる事で助けになればと思い、行動に移したいと思います」という言葉も見られた。
日本酒に限らず、伝統の技、仕事が豊かな能登地方。復興を応援する気持ちが、太田さんの言葉のように「交錯し連鎖して」広がり、続いていくようにするには何ができるかをそれぞれが考える上映会となった。