(C)角川武蔵野ミュージアム

 埼玉県所沢市の角川武蔵野ミュージアムで7月20日から、体感型デジタルアート劇場第4弾「モネ イマーシブ・ジャーニー 僕が見た光」が始まった。映像空間で、印象派を代表する画家クロード・モネ(1840~1926年)の見た景色を表現する、没入型展覧会。2025年1月19日まで。

 モネが人生で訪れた場所をたどりながら、モネの見た景色や共に過ごした家族や友人、最後の住処であるジヴィルニーでの生活など、モネの網膜にはどんな光が投影されていたのかを一日の陽の光の変化になぞらえて追体験する。

 メイン会場となるグランドギャラリーを囲う約100メートルの壁面と床に、33台の高輝度プロジェクターが約26分の映像を投射。1000平方メートルを超える空間に擬似的な映像世界を作り出す。アートと音楽を全身で感じられる没入(イマーシブ)体験が魅力だ。

 モネが19世紀後半にサロン(官展)を離れ、作品発表の場を求めて仲間と自主開催した1874年のグループ展(第1回印象派展)から今年で150年。モネの出展した作品『印象、日の出』を見た批評家が辛辣に揶揄したことから、「印象派」という言葉が生まれた。

 映像は、モネの生涯や創作の変遷が表現されたストーリーで『印象、日の出』から始まり、『散歩、日傘をさす女』『白い睡蓮』『ラ・ジャポネーズ』などの代表作や、同世代の印象派の画家たちの作品も含む。

 同ミュージアムでは、「浮世絵劇場 from Paris」(2021年)、「ファン・ゴッホー僕には世界がこう見える-」(2022年)、「サルバドール・ダリ ーエンドレス・エニグマ  永遠の謎ー」(2023年)を開催し、多くの来場者を魅了してきた。これまでの作品は海外で上映されていた作品を同ミュージアムにあわせてカスタマイズしていたが、今作はジャンフランコ・イアヌッツィ氏と角川武蔵野ミュージアムによる完全新作。日本を皮切りに世界を巡回する。

 映像展示以外にモネを学ぶエリアも充実している。年表や家系図、ジヴィルニーのキッチン、ダイニングルームの壁の再現からは、モネがどんな人生を送り、晩年どのように生活していたかが想像できる。モネが描いたテーマ、手がけた「連作」の手法、モネが影響を受けたジャポニスムに至るまでを解説したコーナーも見どころだ。印象派の誕生に欠かせなかったチューブの絵の具や、それ以前の豚の膀胱に入った絵の具の展示も興味深い。

隈研吾氏設計の角川武蔵野ミュージアム外観 

 同ミュージアムのアート部門ディレクター神野慎吾(じんの・しんご)さんは「当時の目まぐるしく変化していく美術シーンの中で、革新的な試みであった印象派展の歴史的な重要性を知ってほしい。そうした新しい時代の起点となったモネや印象派の画家たちの活動がわかる展示構成になっている。モネや印象派のファンはもちろん、あまり美術に触れてこなかった人が知るきっかけになってもらえれば」と来場を呼びかける。

【イベント概要】
展覧会タイトル:モネ イマーシブ・ジャーニー 僕が見た光
英語タイトル:Monet: I Can See the Lights – An Immersive Journey
会期:2024年7月20日(土)~2025年1月19日(日)
休館日:毎週火曜日(8月13日(火)は臨時開館)
営業時間:10時~18時(最終入館は17時30分)
会場:角川武蔵野ミュージアム1階 グランドギャラリー
住所:埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3 ところざわサクラタウン内

【関連情報】
・モネ イマーシブ・ジャーニー 僕が見た光(角川武蔵野ミュージアム

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By 卯野右子

西東京市新町在住。会社員。仕事の傍ら「アートみーる」(対話型美術鑑賞ファシリテーター)「みんなの西東京」「放課後カフェ」の活動に参加。東京藝術大学で「アート X 福祉」をテーマとしたDOORプロジェクトを履修。2019年より3年間、東京都美術館のとびラーとして、2022年からはアート・コミュニケータとして、人と人、人とアートをつなぐ活動に携わる。

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