都立小金井公園内の江戸東京たてもの園で8月3・4日の2日間、夜間特別開園たてもの園「下町夕涼み」が開催された。今回で20回目。

 昭和初期の商店街を再現した「下町中通り」では文房具店や花屋が2日間限定で開店し、夜間には建物がライトアップされた。ちびっこ縁日や駄菓子屋などの工夫を凝らしたイベントが催された。

 また地元連の阿波踊りでは、大人に混ざって子どもの躍り手の姿も見られた。「ヤットサー!」の掛け声に合わせて園内を練り歩き、訪れた浴衣姿のカップルや家族連れを楽しませていた。

▪️つりしのぶ

 「植村邸」では、夏の風物詩「つりしのぶ(釣り忍)」を販売した。

 つりしのぶは、竹などに苔を巻きつけシダ植物のシノブの根を固定させたもので、江戸時代の庭師がお中元用に作ったのが始まりとされている。家の軒先にぶら下げらて涼を呼ぶ。歌川広重の浮世絵「音曲町繁花の商人(うちわ絵)」に描かれるなど、庶民に親しまれていた。近年では生産数が減少し江戸川区の「萬(よろず)園」が都内で唯一の専業生産者だ。

 つりしのぶの販売員は「つりしのぶの下に風鈴を取り付けて、一緒に音色を楽しむこともできる。エアコンや扇風機のない時代の暑さ対策として、現代にも取り入れて楽しんでほしい」と話した。

▪️常盤台写真場

 園内西ゾーンのある「常盤台(ときわだい)写真場」は、東武鉄道株式会社が東上線沿いに開発した板橋区常盤台住宅地に1937年(昭和12年)に建てられたものを、1997年(平成9年)に復元した写真館だ。1階が住居、2階が写真場となっている。撮影場北側の天井まで届く大きな窓と旧式の撮影用照明ライトが特徴的。

 ビジターセンターの「旧光華(こうか)殿」の展示室では、「特別展 街に写真館があったころ~常盤台写真場と昭和モダン~」を9月23日まで開催。カメラが一般に普及する前の明治・大正期は、写真は写真館で撮影するもので、写真師が腕を競い撮影した写真が家の記録として大切に残された時代。写真館が果たした役割をたどる展示となっている。

 誰でも手軽に携帯やスマートフォンで写真が撮れるようになった現代、町の写真館は激減している。デジタルカメラの普及と技術進歩で、昔ながらの写真館やフォトスタジオが町から消えてしまうのは時間の問題なのかもしれない。

<関連サイト>
・夜間特別開園 たてもの園 下町夕涼み(江戸東京たてもの園
・特別展:街に写真館があったころ~常盤台写真場と昭和モダン~ (江戸東京たてもの園

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By 卯野右子

西東京市新町在住。会社員。仕事の傍ら「アートみーる」(対話型美術鑑賞ファシリテーター)「みんなの西東京」「放課後カフェ」の活動に参加。東京藝術大学で「アート X 福祉」をテーマとしたDOORプロジェクトを履修。2019年より3年間、東京都美術館のとびラーとして、2022年からはアート・コミュニケータとして、人と人、人とアートをつなぐ活動に携わる。

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