西東京市防災会議(会長・池澤隆史市長)は8月21日に開催された会議で災害対策基本法に基づく地域防災計画の修正案を了承、同日発効した。2022年に東京都が首都直下地震などの被害想定を10年ぶりに見直したことを受けての修正。市では同計画で「自助」「共助」を基本に「公助」との連携で防災機能向上を目指す。地震・火山編、風水害編、資料編で計900ページ超の地域防災計画から、地震の被害想定、対策などの概要について市総務部危機管理課に聞いた。
■市の75%で震度6強
都の発表によれば、首都直下で想定される地震は6つあるが、西東京市の被害が最大となるのは多摩地域を震源とするM(マグニチュード)7・3の「多摩東部直下地震」。前回(2012年)の都の想定では、今回とは別の「多摩直下地震」での被害が最大とされ、震度6弱が市域の72%、震度6強が28%とされていたが、今回は6強が市域の75%、6弱が25%となっている。
これにより火災に伴う被害も悪化。季節や時間帯、風などの気象状況別のデータで「冬の夕方18時」「風速8メートル/秒」のとき被害は最大となり、火災による焼失棟数は3537棟(前回681棟)、死者は101人(同44人)、負傷者は1112人(同892人)と想定されている。
「想定地震や被害の算出方法も前回とは変わり、市内の建物の倒壊件数などは減ったのに対し、火災件数が驚くほど増え、それに伴って死者や負傷者の数も増えています」と危機管理課災害対策係の宮前卓志係長が説明する。そのうえで、今回の修正では「火災、延焼をどう防ぐかというところに重きを置き、そのためにやるべきことをより具体的にした」のが特徴という。
■減災に向けての目標と対策
市の地域防災計画では、「減災目標」として①死傷者の半減②避難者の3割減③帰宅困難者の安全確保及び帰宅支援―を掲げ、それぞれの目標と、目標達成のための対策を盛り込んでいる。たとえば、死傷者の半減では、出火防止や初期消火の対策、救助体制の整備として「木造密集地域への感震ブレーカー設置に関する周知」や「地域配備消火器の整備」、「防災市民組織におけるリーダーの育成及び訓練」などを挙げている。
最大3万9935人が想定される避難者の3割減(2万7954人)に向けては、住宅の倒壊や火災のほか、ライフライン被害による避難者も考慮。「被災建築物に対する応急危険度判定の早期実施」「高層建築物等におけるエレベーターの早期回復」なども新たに取り入れた。
帰宅困難者(8504人想定)については「事業所等への一斉帰宅抑制等の周知・啓発」「一時滞在施設の確保及び食料等の備蓄など支援体制の確保」なども加えられた。
これらの減災目標と対策で重視されるひとつに「防災市民組織」がある。「マンションや自治会など地域で防災に関して取り組んでいただいている組織で、一定の要件を満たしている場合は登録いただき、補助金も出しています。現在の登録数は97団体」(宮前係長)。地域の結びつきが懸念される中で、防災市民組織は「共助」の要となり、「公助」との連携を充実させることになる。
■市民の役割と備えをアピール
一方、地域防災計画では「自助による市民の防災活動」として市民の役割・備えなどを提示。「水(1日1人3L目安)や食料(最低3日、推奨1週間分)」をはじめとした備蓄品、準備すべきものや防災・災害時の行動指針なども示す。
「今回の修正で劇的に変わったということはなく、従来やってきたことをさらにブラッシュアップした内容ですが、市民の方お一人お一人に意識していただければ」と宮前係長。
そのための機会として市が実施している「防災講話」も近年、学校や地域などからの要請が増え、災害対策係の波多野正裕主査は「能登半島地震や南海トラフ地震のこともあり、防災に対する市民の温度感は上がっていると感じます」。
関係機関による総合防災訓練や、市民への防災意識啓発のための展示などを今年度も実施予定。さらに、市と災害時の施設利用などに関する協定を締結した民間団体ものべ約100団体にのぼっている。今年8月にも、スポーツクラブのルネサンスと同社が保有するスポーツ施設を「一時滞在施設」「福祉避難所」などに活用する協定を締結した。地域防災計画は、市防災会議のホームページ(令和6年度第2回防災会議会議録)にアップされているほか、近日中には「概要版」もアップ予定だ。波多野主査は「防災は何か起きたときのための保険のようなもの。保険の見直しをするように、折々で地域防災計画の確認や防災講話・訓練などへの参加などをお願いしたいです」と呼びかけている。