今日は昭和の日。だからということはないのだが、ふいに昔のコーラの自販機について思い出した。

 私の子供のころの記憶である。

 場所は旧田無市役所。ご存知の方はどのくらいいるだろうか。私が小学生のころには、青梅街道沿いの総持寺の脇、木造二階建ての、いかにも村役場といった風情の建物が市役所だった。建物自体は街道からは少し引っ込んだところにあったので、中央通りのバス停から、暗渠になった用水路の道を歩いていくのが常だった。今はやすらぎのこみちと言うんだっけか。

 母親に連れられて、窓口に並ぶ長い行列の中にいるときに、その自販機は突如現れる。

 今の人にどう説明したらいいだろう。魚などの冷凍庫の形と言えばいいのだろうか。上に開く扉があり、開けると中にレールがあって、たくさんのコーラの瓶がぶら下がっている。

 代金を入れるとレールの端にある出口のロック装置が外れる。出口に一番近いコーラを持ち、レールの上を滑らせて、ようやく出口から取り出すことができる。今の感覚で言うと、半自動販売機といったところか。

 栓抜きはどうしたんだっけ。たぶん、多くの自販機がそうであるように機械自体にくっついていたのだろうが、そこは定かではない。私は母親について市役所に行くたびに、このコーラをねだった。

 コーラが飲みたかったのではない。このメカが楽しくて、レールを滑らせてコーラを取り出す操作がしたかったのだ。

 プラモデルが好きだったり、オーディオが好きだったり、そんな男の子(と限定しているわけではないが)の心をくすぐる「メカ」がそこにはあった。

 今はいい時代で、ネットで「コーラ・自販機・レール」と検索すると、その自販機の写真を見ることができる。そうそう、こんな形だったなぁ。もっと大きいと思ってたけど、意外に小さいなぁ。そんな感想を持った。

 私はと言えば、そんなメカ好きの少年のまま、歳だけを重ねている気がする。

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By 高橋靖

東久留米市のコミュニティFM局「TOKYO854くるめラ」代表取締役。

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