大規模災害時の生活用水を確保するため井戸の調査と普及を進めている小平市のNPO法人「小平井戸の会」は1月13日、小平市中央公民館で1月定例会を開いた。能登半島地震で断水が続き、生活用水の確保に窮している現状を受けて、震災時における井戸の必要性をあらためて確認した。( カバー写真:毎年続けられている井戸の実態調査。右が金子さん)

 震災時、被災者が一番困るのは生活用水の確保だ。阪神・淡路大震災では断水で長期間トイレが使えなくなり、飲水やトイレ行きをがまんした多くの高齢者が心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症を引き起こして亡くなった。この時、生活用水の確保に大きく役立ったのが、地震に強く、停電でも手押しポンプで無制限に水を汲み出せる井戸の存在だった。

 道路が寸断された能登半島地震では水道の復旧が遅れ、生活用水の確保が喫緊の課題となっている。このため河川やため池の水を浄化したり、井戸を近隣で利用したりして対応している。

 小平市では市内にまとまった河川がないため、震災時の生活用水不足はより深刻となることが予想される。しかし民間の井戸を「震災対策用井戸」として防災マップに掲載している小平市は個人情報保護を理由に詳しい所在地を公表していないうえ、他の多くの自治体のように避難所や公園に震災用井戸を設置する施策をとっていない。

 市内にある井戸の実態調査を続けてきた小平井戸の会は、この日の定例会で2023年度の井戸調査の結果を共有するとともに、東京都23区多摩26市の自治体を対象に実施している災害用井戸に関する「第2回東京都井戸行政調査」の経過を報告した。2018年の第1回調査では、公立公園や避難所などに公共の災害用井戸を持たない自治体は小平市を含めて1区9市と全体の2割にとどまった。近く第2回調査の結果を発表する予定。

 報告を踏まえて代表の金子尚史さんは、「民間の井戸は減りつつあり、災害時にその善意に頼るのには限界がある。今後、他の自治体のデータをもとに、公共の井戸を公園などに設置するよう市や議会に強く働きかけていきたい」と話した。

定例会では活発な議論がかわされる

【参考情報】
・小平井戸の会(HP
・震災対策用井戸(小平市
・震災時の生活用水に井戸水の利用を(ひばりタイムス
・冊子「災害を生き抜く 身近にある水源 災害に有効な井戸」(小平井戸の会)

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By 片岡義博

共同通信社の文化部記者として主に演劇、論壇を担当。福岡編集部、文化部デスクを経て2007年にフリーに。書籍のライティングと編集、書評などを手掛ける。2009年から小平市在住。

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