感謝状を授与された下山響子さん(右)と高橋健二小平警察署長(ジェイコム東京提供)

 ATM(現金自動預け払い機)前で電話をしている高齢者に声をかけ、特殊詐欺被害を未然に防いだとして、小平警察署は4月14日、ジェイコム東京調布局(東京都調布市)に勤める下山響子さんに感謝状を授与した。下山さんはこの日、同署が開催した特殊詐欺被害防止キャンペーンに参加し、被害防止に向けて国際電話の利用停止などを呼びかけた。

 下山さんは今年1月28日正午ごろ、西武新宿線花小金井駅近くのATMコーナー内で、携帯電話で通話しながらATMの操作をしている高齢の男性に気づき、心配になって「すみません、いったんそのお電話を切って頂くことはできますか?」と声をかけた。電話を切った男性から話を聞くと、医療費控除の還付金を受け取る手続きをしているという。

 「最近、そうした形の詐欺が増えているようなので、いったん警察に確認して頂いたらいかがでしょうか」。驚いている男性に丁寧に説明をして一緒に近くの交番に相談に行ったことで、典型的な還付金詐欺であることが判明した。

 下山さんは「警視庁特殊詐欺被害防止アドバイザー」を委嘱されたジェイコム東京で研修を受けたうえ、同社の従業員が以前、詐欺被害を未然に防止した事案があったことから「自分も気になる場面に遭遇したら声をかけてみようと思っていた」という。

 小平市が小平署と連携してまとめた市内の特殊詐欺被害状況によると、2023年は認知件数58件で被害総額約8200万円、24年は43件で約2億円、さらに今年は3月末までの3カ月間で既に22件で約7800万円と被害が急増している。

 昨年のデータでは、被害のきっかけは自宅の固定電話に犯人から電話がかかってくるケースが約7割。携帯電話がきっかけとなる割合は22年はほとんどなかったが、徐々に増えて24年は3割弱を占めるようになった。被害者の年代は60代以上が全体の約8割を占めているが、22年、23年には被害に遭わなかった20歳代から40歳代にも最近、被害が広がっている。

 小平署の高橋健二署長は「今回の詐欺被害の未然防止は、J:COM従業員の方が休日にも関わらず、迷わず高齢者に声を掛けて頂いたことで防ぐことができた事案。最近の特殊詐欺の手口は警察官をかたったオレオレ詐欺が多発している傾向にあるが、小平市内では還付金詐欺の被害が多い特徴がある。小平警察署では国際電話を使った詐欺電話が多数かかってきているため、国際電話の利用停止などの対策を取っている」などとコメントした。

 自宅の固定電話への防止対策としては▽在宅中も留守番電話にする▽迷惑防止機能付電話機の設置▽自動通話録音機の設置▽国際電話の利用休止▽NTT東日本による特殊詐欺被害防止サービスの利用――などを挙げている。

 下山さんは「今回、詐欺被害を未然に防ぐことができ、地域の皆さまの大切な暮らしの一部を守ることができたことは大変光栄です。地域社会とつながりを持って、一歩踏み出す行動で今後も安心安全な街づくりに貢献する一員でありたいと思います」と話している。

参考情報:
令和6年 市内の特殊詐欺被害状況の傾向と対策について(小平市)

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By 片岡義博

共同通信社の文化部記者として主に演劇、論壇を担当。福岡編集部、文化部デスクを経て2007年にフリーに。書籍のライティングと編集、書評などを手掛ける。2009年から小平市在住。

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