小平中央公園グラウンド

 小平市で2月1日、市中央公園グラウンドや鷹の台公園の整備・改修に関する説明会が開かれた。管理、運営が市から民間事業者に委託される。グラウンドなどの天然芝を人工芝にする計画もあり、参加者から健康被害を心配する声が相次いだ。人工芝は近年、環境汚染や健康被害への影響が指摘され、先進国で使用しない動きが広がっている。人工芝に関する欧米の動きに詳しい2人の専門家に事情を聴いた。

 ジャーナリストの猪瀬聖(ひじり)さんは、月刊誌『食品と暮らしの安全』2023年8月号で、「人工芝からPFAS」と題し、米国の実情をレポートした。野球やサッカーのグラウンド、子どもの遊び場などに使われる人工芝から人体に有害な有機フッ素化合物(PFAS)が検出され、自治体が人工芝を禁止する動きが出始めたことを報告した。猪瀬さんは日本経済新聞ロサンゼルス支局長時代に、米国の消費者運動などを取材し、現在は有機農業やPFAS問題などを中心に調べている。

 2024年11月号に、「人工芝に健康被害の懸念」と題し、続報を掲載。猪瀬さんによると、ボストン市は2022年、公園に人工芝を敷くことを禁止。コロラド州も2026年から、PFASを使った人工芝の新設を禁止する。フィラデルフィア市の有力紙フィラデルフィア・インクワイアラーは、地元大リーグチームの元選手6人が40代~50代で死亡。本拠地のスタジアムで使われていた人工芝から16種のPFASが検出されたと報道した。メーカーが「PFAS不使用」としている人工芝からも検出され、衝撃が広がったという。

 マイクロプラスチック(微小なプラスチック粒子)の大幅削減を掲げる欧州連合(EU)は、マイクロプラスチックを使用した製品の販売禁止を決めた。禁止の対象には人工芝に充填されるゴムチップも入っている。猪瀬さんは、「日本では環境省が、学校やスポーツ施設の人工芝からマイクロプラスチックの流出量を抑えるよう文科省に要請しているが、『お願い』ベースで欧米の対策とは天と地ほどの差がある」と指摘する。

 「人工芝はなぜこわい?」(日本消費者連盟)や「プラスチックごみ問題入門」(緑風出版)の著書がある栗岡理子さんは、人工芝が風雨にさらされてちぎれ、プラスチック粒子になり、飛散する危険性を指摘する。公園で遊ぶ児童や散歩するペットたちは、顔が地面に近い。飛散を防ぐため、側溝にフィルターを設置する対策もあるが、「フィルターの目が細かいと粒子が詰まりやすく、目が大きいと役に立たない。実験でできても実際には難しい」と話す。

 「環境経済学」が専門で、プラスチックや古紙問題などを中心に取材や執筆、講演活動などをしている栗岡さんは、人体への影響を考え、人工芝の新たな敷設を禁じる自治体が増えている欧米の現状にも詳しい。「欧州のプロサッカーチームでは、天然芝に人工芝の繊維を5%以下混ぜた『ハイブリッド芝』へ切り替える動きが進んでいる」という。 栗岡さんの講演会「人工芝からもPFAS?!―ほんとうにいいの?中央公園グラウンドの人工芝化―」が、16日午後2時から小平市の美園地域センターで開かれる。資料代500円。

 「クローズアップ現代」(NHK)は2月3日、「“プラスチック粒子”人体に健康リスクは?」をテーマに特集。マイクロプラスチックのもとになる製品例のひとつに、人工芝が並んだ。近年、「きわめて小さな粒子になったプラスチックの毒性に関する研究が世界で急増している」と紹介。論文の数は8747と5年で8倍以上に増えているという。「プラスチック対策の優先順位」は「リデュース(削減)」が最も優先度が高く、「リユース(再使用)「リサイクル(再資源化)」と続く。日本に求められている視点だという。

人工芝の収集イメージ(小平市ホームページより)
猪瀬聖さん
講演会案内のチラシ

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By 吉井亨

元新聞記者 東京、北海道、九州のほか、群馬を除く関東5県などで取材。卒業後は日本語教師も。

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