2月13日に開かれた西東京市議会の臨時本会議で、市内で発生した傷害事件をめぐる無所属議員の緊急質問に対して「緊急性が乏しい」との理由で質疑の打ち切りを求める自民党議員の動議が可決され、質疑が打ち切られる事態が起こった。緊急性の有無を理由に議員の緊急質問が途中で打ち切られるケースは極めて異例。議員の発言を封じるものとして他会派や市民団体から批判が相次いでいる。
西東京市議会会議規則によると、緊急質問は「質問が緊急を要するときその他真にやむを得ないと認められるとき」「議会の同意を得て質問することができる」としている。13日の臨時本会議では、3議員の緊急質問が議員運営委員会に諮ったうえで承認されたため、日程に追加された。
まず自民党の稲垣裕二氏は池澤隆史市長に対して▽市長選における高得票率当選の受け止め▽公約の実現方法と効果▽市議会との関係―の3点について質問。続いて公明党の大林光昭氏は選挙管理委員会に▽市長選の投票率の分析▽投票者総数と得票総数との差の要因▽選挙活動の定義ーについて、池澤市長に市民の声を2期目にどう生かすかなどについて質問し、それぞれ答弁を得た。
無所属の納田さおり氏は、1月23日夜、西武新宿線田無駅北口で発生した傷害事件をめぐり、市は発生から約1時間後に事件を覚知しながら、市民に注意を喚起する緊急メール発信が発生の5時間40分後になったことを取り上げた。▽その間、終電前に多数の帰宅市民は犯人未確保の状況を知らないまま歩いていた。市が即時対応しなかったのはなぜか▽事件について市長に即時ではなく翌朝に伝えるという判断をしたのはなぜか▽翌朝、近隣小中学校の登下校に関する注意喚起について即時対応しなかったのはなぜか―などと問いただした。
すると、この質問に対して稲垣氏が「緊急性が明らかに乏しい」として質疑打ち切りの動議を提案。佐藤公男議長はこれを議題として採決を取り、自民党、公明党、維新・国民民主、無所属の議員らによる賛成多数で可決された。
稲垣氏の質疑終結の動議の取り扱いに対して、西東京・生活者ネットワークの後藤ゆう子、かとう涼子両議員は2月16日、佐藤議長に申し入れ書を提出した。
市議会会議規則によると、緊急質問が「その趣旨(緊急を要するときその他真にやむを得ないと認められるとき)に反すると認めるときは、議長は、直ちに制止しなければならない」とし、質疑終結については「質疑又は討論が続出して容易に終結しないときは、議員は、質疑又は討論終結の動議を提出することができる」と定めている。
申し入れ書は、今回の動議による質疑終結はいずれの要件にも当たらないとした上で「議員が通告を行い、議会運営委員会によって取り扱いが承認された緊急質問が、緊急性の有無を理由に動議によって打ち切られるという事態は西東京市議会始まって以来のことであり、将来に禍根を残したと言っても過言ではありません。質問権とは、言うまでもなく議員の固有の権限であり、最大限尊重されなければなりません。議長におかれましては質問終結の動議の取扱いには十分に時間をかけ、慎重に判断するよう要望する」と訴えている。
無所属の田村ひろゆき議員はソーシャルメディアのXでこの問題を取り上げ、「今回の緊急質問については事前に質問通告書が出され、それを議長はじめ他の議員も認識した上で発言を許可したのですから、それを打ち切り動議という形で数の力で制する結果になったのは非常に残念で、悪しき先例ができてしまった」と記した。無所属の長井秀和議員はXで「市民の命を軽視する暗愚な裁断」と評した。
また市政をチェックしている市民団体「西東京・みんなの会」はソーシャルメディアのフェイスブックで「3人の緊急質問の中で、唯一緊急性があったのは納田議員の質問」として「議員が申し出をし、議長が議会に諮り承認された質問が、民主主義の論理を無視して数の論理により打ち切られる、こんなことが許されるのでしょうか」「全く筋の通らない理由により、特定の議員の発言を封じる議会運営に抗議します」と表明した。
市議会事務局によると「西東京市議会で質疑を動議で打ち切った例はこれまでない」という。そのうえで会議規則第16条「動議は、法又はこの規則において特別の規定がある場合を除くほか、他に1人以上の賛成者がなければ議題とすることができない」とする動議成立に関する要件を挙げて「規則は動議の内容を規定しておらず、質疑の終結動議も議会に諮って1人以上の賛成者がいれば成立させることができる。このため今回の質疑終結は規則違反にはならない」という判断を示している。
関連情報:
・令和 7年 第2回臨時会( 2月13日)(西東京市議会・録画中継)=3カ月間視聴可能
・議員の質問権は最大限尊重されるべき(西東京・生活者ネットワーク)
・西東京・みんなの会(facebook)