冬枯れの落合川のわき道を歩くと、ほぼ間違いなくカルガモたちに出会う。カルガモは群れをなして存在する。冬場は草が枯れるから、カルガモの群れはにぎやかな感じでとても目立つ。

 落合川の源流となっている湧き水は「平成の名水100」に東京都で唯一選ばれているくらいだから、西武池袋線をくぐってちょっとのこの不動橋近くは、湧水からは少し離れているけれど、きれいな水が気持ちよく流れている。

 カルガモの行動を見ているのは楽しい。縄張り争いなのか、カモ同士の喧嘩を見たこともある。

 シロサギもしばしば見かける。一度、彼(彼女?)が、水面を思案気に眺めているかと思ったら、素早く頭を水に突っ込み、小魚をゲットした瞬間に立ち会ったことがある。「きみ、なかなかやるじゃないか」と頭のなかでつぶやいた。ただこの日はめぐり合わせが悪かったのか、シロサギ自体を見かけなかった。

 川に立てられた看板によるとカワセミもいるらしい。見た記憶があるのだが、テレビの「ダーウィンが来た」あたりで見た映像が、自分の記憶として保存されている可能性を否定できない。

 ときおり頭が緑色をしたカモを見た記憶もある。これはマガモの雄らしい。落合川がこの先で合流する黒目川で、マガモを撮影してネットに上げている人がいるので、この記憶はたぶん確かだろう。

 この日は、写真のようにカルガモ(親子かもしれない)のすぐ下を大きなコイが泳いでいた。両者とも我関せず、というようにも見える。鳥と魚には縄張りはないのだろうか。

 コイがウヨウヨと群れなす様子は、一種異様な迫力がある。その昔、落合川が高度成長期の「どぶ川状態」から復活しようとしていたときにも、コイの群れを見た記憶がある。コイは汚染に強いらしい。

 同じころ、都心のお茶の水あたりの神田川でも巨大なコイを見かけた。落合川が「どぶ川状態」であっても、コイたちは湧水近くでしぶとく生きていたのかもしれない。あるいは環境が少し良くなって、どこからかやってきたのだろうか。

 いずれにせよ、いまいる連中は、そのときのコイの末裔であるように思われた。

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By 杉山尚次

1958年生まれ。翌年から東久留米市在住。編集者。図書出版・言視舎代表。ひばりタイムスで2020年10月から2023年12月まで「書物でめぐる武蔵野」連載。

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