小平市の社会福祉法人「ときわ会」が運営する障害者福祉施設で複数の利用者が職員から身体的・心理的虐待を受けていた問題で、同法人が設置した第三者委員会は1月18日、そのうち1カ所の作業所の虐待事案に関する調査報告書をホームページで公表した。虐待の背景に「多くの不適切な支援があることが確認できた」として、同法人に運営体制、支援体制の見直しを求めている。
カバー:社会福祉法人「ときわ会」が本部を置く作業所(小平市小川町)
ときわ会では運営する12施設のうち複数の施設で職員による知的障害者への暴行や暴言が長期にわたり続いていたことが昨年10月、報道によって表面化した。小平市は同法人の全職員に対するアンケート調査結果を公表し、小平市議会は全員協議会を開くなど対応に追われた。暴行や暴言の一部は複数の関係自治体によって虐待が認定され、同法人は2施設で起きた虐待事案に対する「改善状況報告書」を昨年11月にホームページで公表した。
今回公表したのは、2施設とは別の施設で起きた虐待事案に対する調査報告書。2020年から23年にかけて、特定の利用者を「後ろ手にひねり上げる」「後頭部を床に打ちつけて押さえつけた」といった職員による虐待を東村山市が昨年9月と12月に認定した。
また別の利用者に対し「行動を抑制するため睾丸を握る行為を複数回行っていた」「頭をげんこつで叩いた」などの職員による虐待を東久留米市が昨年12月に認定した。
報告書は施設の記録や理事・職員の証言を基に虐待に至る経緯や背景を探り、問題点として(1)ベテラン職員の影響力が強く、他の職員は意見を言いづらい(2)力ずくの対処が虐待に当たるという認識が薄い(3)「利用者は作業所で仕事をしていれば安定する」という昔ながらの支援観が根強く、当事者中心の支援体制が組めていない――などと指摘した。
背景として、事業所の林立による利用者の「過密化」や慢性的な職員不足を挙げ、同法人に対して(1)理事会の増員と透明化を図るための利用者や家族、職員向け「総合相談窓口」の設置(2)職員間の情報共有や意見交換のための小規模会議の開催(3)1グループの人数削減や広いスペースの確保など利用者を受け入れるための物的・人的環境の整備――などを提言している。
社会福祉法人「ときわ会」は1978年に創立。6つのグループホームと6つの通所事業所を運営し、知的障害や肢体障害、精神障害がある障害者が生活する場、働く場を提供している。
【参考情報】
・第三者委員会調査報告書の公開について(社会福祉法人ときわ会)
・小平市の障害者福祉施設で職員が利用者を虐待(ひばりタイムス)