小平市立小学校の男子児童へのいじめを担任教諭が誘発し、暴言や暴力を受け続けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、男児と保護者が市に計約330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9月11日、東京地裁立川支部であった。中村恭裁判長は原告の訴えを一部認め、市に9万9000円の支払いを命じた。
訴えによると、男児が小学6年の時の担任だった女性教諭は2022年度の新学期から男児を同級生の前で笑いものにしたり怒鳴りつけたり差別的対応をする行為を続けた。「抜き打ちチェック」と称して男児の所持品をクラス全体に公開して「何これ? 汚い」などと発言したり、授業中に男児の脇腹を人差し指で何度も深く突く行為を繰り返したりした。また教室内に逃げ出したカナヘビを男児が持ち込んだと誤解して叱責するなどした。
教諭の対応を見た一部の同級生たちが男児を冷やかすなどし、日常的に蹴ったり首を絞めたりする暴力を振るう生徒もいた。
男児は嘔吐やめまいを起こすようになり、22年10月から登校が途絶えがちに。心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された後の12月半ばからは全く登校できなくなった。
保護者は学校側に事態の改善を繰り返し求めたが、いじめ行為は止まらなかった。報告を受けた市は12月までに一連のいじめ行為を「いじめ重大事態」と認定。調査開始は23年3月まで持ち越され、結局、男児は小学校に復学できなかった。
保護者は学校や市側に調査の状況や結果の説明を何度も求めたが、「調査中なので答えられない」といった回答にとどまった。このため男児側は「教諭の行為は学校教育法が禁じる体罰のほか暴言、不適切な指導に当たる。校長はいじめを放置し、教諭にも科すべき処分を行わなかった」などとして小平市に損害賠償を求める訴訟を23年9月に起こした。
これに対して市側は、教諭の行為に違法性はなく、校長や教育委員会の対応にも不適切な点はない、などと主張していた。
判決は、教諭の行為のうち男児の脇腹を指で日常的に突いた行為や所持品の公開抜き打ち検査、カナヘビをめぐる叱責の違法性を認定。「(教諭の行為の)違法性は教育的指導の一環としてされたものの、その方法を誤った点に求められる」と指摘した。校長や教育委員会の対応の違法性や、校長や教諭の行為とPTSD発症と因果関係は認めなかった。
判決について男児の父親は「いじめの関与や管理職の不適切な対応、PTSD発症との因果関係などが認められなかったのは残念だが、不適切な指導が違法行為として認められたことは一定の評価ができる。控訴するかどうかは弁護士と話し合って検討したい」と話している。