朗読劇「久米川に爆弾が落ちる」のリハーサル

 空襲の直撃弾を受けながら生まれたての赤ちゃんが奇跡的に生き残った実話をもとにした朗読劇「久米川に爆弾が落ちる」の公演が8月21日、2回にわたって東村山市立中央公民館で開かれ合計350人の市民が鑑賞した。戦後80年特別公演として「朗読劇の会ゼルコバ・東村山市」が「東村山昔話百話」から創作した。

 東村山市一帯は1945年4月2日、米軍の爆撃機B29による激しい空襲を受け、この中で直撃弾を受けた民家で、生まれたばかりの赤ちゃんががれきの中で奇跡的に生き残って、人々に希望の灯をともした。この空襲ではB29が1機墜落して搭乗員11人全員が死亡、その墜落地点の住人が供養のための平和観音が建てたとの逸話も生まれた。

 東村山市の木ケヤキの英語名からとった「ゼルコバ」は2017年に立ち上げられ、職業も年齢もさまざまなアマチュアの市民らによる朗読劇の会で、東村山を題材にした話などを取り上げて上演活動をしている。「久米川に爆弾が落ちる」は2023年に上演して好評を得た作品で、今回、メンバーの1人山田久未さんが平和へのメッセージを込めてあらためて脚色した。

 日常生活にモヤモヤを募らせている主婦が市内の「お話の館」を訪ねたのをきっかけに、空襲で家族の命と幸せが一瞬に奪われ、わずかな希望として赤ちゃんが助かったエピソードに接して衝撃を受ける。さらに「お話の館」の館長がその赤ちゃんだったことも知り、平和と普通の日常がいかに貴重で大切かを出演者全員で吹くシャボン玉に託して訴えるという内容。30分間の公演が終わると、80年前地元で起きた実話に思いをめぐらすように客席から大きな拍手がわいた。

 ゼルコバの菅原千稲代表は「子どもたちを対象にした公演依頼もあるので、より分かりやすい内容に工夫するなどして公演活動を続けていきたい」と話した。

公演後の交流風景
東村山市立中央公民館

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By 飯岡志郎

1951年、東京生まれ。西東京市育ちで現在は東村山市在住。通信社勤務40年で、記者としては社会部ひとすじ。リタイア後は歩き旅や図書館通いで金のかからぬ時間つぶしが趣味。

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