鷹の台駅前広場の道路標識

 小平市が発注した公共事業で受注業者に支払う工事費の一部に未払いの疑いがある問題で、新たに道路標識移設に関わる工事費についても未払い状態が続いている疑いのあることが9月25日までに分かった。市側は「適正な手続きを経て支払いをしており、未払いの認識はない」としている。

 問題となっているのは、小平市が2022年に発注した「鷹の台駅前広場整備工事」。駅前をロータリー形状に整備し、歩道の舗装やサークル型ベンチなどを設置した。事業費は東京都が補助金で9割を負担し、小平市は1割を負担。入札の結果、小平市内の業者が落札し、22年から23年にかけて工事を実施した。

 未払いの疑いがあるのは、西武国分寺線鷹の台駅近くに設置された道路標識「たかの台駅通り」のコンクリート基礎部分に関する工事費。

 今年3月に開かれた小平市環境建設委員会で、この工事費をめぐる安竹洋平議員の質問に対し、当時の道路課長補佐(現・公共工事担当課長)が「市のほうで積算した際に、コンクリートの基礎部分といったところが抜け落ちてございました」「基礎部分が抜け落ちたというところにつきまして、市のほうで試算いたしますと、移設を含めて約3万円と算出してございます」と答え、未払いの事実を認めた。

 また9月12日の小平市議会定例会の一般質問で伊藤央議員は、未払いとなっている道路標識工事について土木工事業者が使用する「土木積算システム」で試算したところ、「7万7千円程度の費用がかかる」として、市が算出した工事費約3万円が不当に低いことを指摘した。

 この公共事業では、サークルベンチ内の樹木を支える二脚鳥居支柱の設置費約1万8千円についても、3月の市環境建設委員会で市側は未払いの事実を認めている。

 ところが9月の市議会で小林洋子市長は、支柱設置や道路標識移設の工事費について「工事全体の設計変更を行う際に設計変更案を受注業者に示したが、支柱などに関する異議はなく、合意を得たうえで手続きは完了したため未払いの認識はない」と3月の市側答弁を翻したうえで、「適正な手続きに基づき工事代金は支払われているため、新たに追加して支払うことは考えていない」と答えた。

 答弁の食い違いに関する問い合わせに対し、市道路課は9月24日、メールで「3月の答弁では設計変更がなされず支払いをしていない旨を答弁し、9月の一般質問では設計変更案を受注業者に示し、変更内容に合意をもらった上で手続きが完了し、工事代金の支払いが行われていることから未払いという認識はない旨を答弁しており、双方とも同様の主旨を答弁している」などと回答した。

 しかし受注業者によると、これまで市側から設計変更案を示されたことはなく、今年3月から9月までに市から支払いに関する打診や相談も一切なかった。また小平市に情報公開請求をしたところ、開示された当該工事の関連資料に「設計変更案」は存在しなかった。

 受注業者は、小平市が支払いをした工事設計内訳明細書を示して「道路標識の移設工事費は計5352円しか受け取っていない。未払いの工事はこのほかにもある」と証言。「公共事業に関しては発注側の小平市と受注業者が対等の立場にあるとは言い難く、市の指示に業者は異論を差し挟めないのが実情だ。今回のように未払いに泣き寝入りを強いられるなら公共事業を受注する業者は限られ、結果的に市民が適切なサービスを受けられず、割を食うことになることが心配だ」と話している。

あわせて読みたい:

小平市が公共事業の工事費未払いの疑い 鷹の台駅前の支柱設置費

標識工事移設の竣工図を示す受注業者
小平市議会(9月12日)

Loading

By 渡辺正大

ジャーナリスト。共同通信社記者、出版社で編集者などを経験。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース修士課程修了。修士論文「調査報道における取材手法の考察」。調査報道、事件、地方自治、ローカルニュース、いじめなど幅広いテーマをフィールドに取材を続けている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です