東京地裁立川支部

 東村山市立小学校の教職員が児童の個人情報を記載した名簿を保護者に無断でPTAに提供したのは、地方公務員の職務範囲を逸脱しており違法として、保護者が校長に1円の損害賠償を求めた訴訟の判決で東京地裁立川支部(杉山順一裁判長)は10月20日、保護者の請求を棄却した。

 判決理由で、杉山裁判長は校長個人への損害賠償請求について「職務を行うにあたり、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたときは、公共団体がその被害者に賠償する責に任ずることとし、公務員個人は民事上の損害賠償請求を負わない」と指摘した。

 またPTAへの関与について「保護者だけでなく、教職員も構成員であり、校務をつかさどる立場にある校長がPTAにおける関与は、校長としての職務執行の外形を有すると認めるのが相当」などとして、「学校職務の範囲外なので校長は個人としての責任を負う」との保護者の主張を退けた。

 判決理由では、PTAの名簿情報の取り扱いや会費の取り扱いについて、学校側が謝罪し、市教委も話し合いを助言すると市議会で答弁していることに言及して保護者側への配慮も示した。

 判決を受け、保護者は取材に応じ「裁判を起こしたことで、東村山市教委がPTAの実態調査を進めるなど、子どもの通学する学校ではPTAへの加入は任意に変化があったことへの社会的意義は大いにあった。行政内部の矛盾と運用上の問題点を可視化できた点は前向きにとらえたい」と話した。

 保護者が提訴している同市立中学校の判決は11月10日午後1時10分から同地裁支部で言い渡される予定。

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By 渡辺正大

ジャーナリスト。共同通信社記者、出版社で編集者などを経験。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース修士課程修了。修士論文「調査報道における取材手法の考察」。調査報道、事件、地方自治、ローカルニュース、いじめなど幅広いテーマをフィールドに取材を続けている。

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