東京大学の研究施設を舞台に、農業と食を体験的に学ぶ親子向けイベント「農と食の体験塾 トマト編2025」が12月21日、西東京市の東京大学生態調和農学機構(旧東大農場)で開催された。小学生と保護者を対象とした取り組みで、当日は13組35人が参加した。
「農と食の体験塾」は2014年に始まった市民向け教育イベントで、これまで大豆の栽培から味噌づくりまでを体験するプログラムが行われてきた。2024年度に「大豆編」が終了し、新たなテーマとしてより身近な食材であるトマトが選ばれた。この「トマト編」は、同機構の教職員や技術職員、西東京市関係者、市民委員で構成される社会連携協議会で検討され、今回が初めての実施となった。
募集は大学のホームページやSNSを通じて行われ、都内だけでなく、茨城、千葉、神奈川、福井などから約50組の応募があった。抽選の結果20組が選ばれたが、当日はインフルエンザ流行の影響などで一部キャンセルがあり、13組の参加となった。
当日のプログラムは、研究者による講義、温室での収穫体験、トマトの食べ比べワークショップの三部構成で、講義では矢守航准教授がトマトの特徴や研究の視点について解説。「なぜトマトは丸いのか」「色と甘さは関係があるのか」といった質問が相次いだ。
温室では、技術職員の説明を受けながら収穫体験が行われた。キラーズやマイクロトマト、千果(チカ)、プチぷよなどの一般の店頭ではあまり見かけない品種に、子どもたちは関心を示していた。用意された袋に入りきらないほどたくさん収穫する参加者も見られた。
後半の食べ比べワークショップでは、事前に甘さを予想したうえで試食を行い、デジタル糖度計による測定も実施。複数の測定値をとって平均を求める必要性を子どもが指摘する場面もあり、主催者側が驚く一幕もあった。
終了後のアンケートでは、子どもから「トマトの種類の多さに驚いた」「研究をしてみたい」といった声が寄せられ、保護者からは「農業のイメージが変わった」「研究の考え方に触れられた」との感想があった。一方で、植え付けから育成までを体験したい、料理教室も実施してほしいなど、次回に向けた要望も挙がった。
今年度は1回限りの開催となったが、主催者側は「アンケート結果や運営上の課題を踏まえ、次年度以降の継続実施ができれば」と意欲を見せていた。


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