「遠隔対応駅」東伏見駅構内のモニター付きインターホン(青色のボックス)

 西武鉄道が一部の駅で駅係員による窓口対応を終了してインターホンを通じた「遠隔対応駅」にする営業体制に変更した措置について、障がい者や高齢者らから不安の声が挙がっている。西東京市内の障害者団体は強い懸念を表明し、西武鉄道や市に意見書や質問状の形で対応を求めている。3月の西東京市議会では市側の対応をめぐり批判が相次いだ。

■夜間に無人の時間帯

 西武鉄道は「少子高齢化に伴う労働力不足が加速する中で鉄道事業を安定的に持続させるため」として、2024年から駅係員が常駐せずにインターホンで利用客に対応する遠隔対応駅化を順次進めている。

 25年3月から国分寺線・鷹の台(小平市)をはじめ11駅の窓口対応を順次終了。同年12月末には、26年2月上旬から新宿線の東伏見、西武柳沢(以上西東京市)、久米川、西武園線の西武園(以上東村山市)、新宿線の入曽(狭山市)の5駅を遠隔対応駅にすると発表した。

 各駅では乗車券類の発売・精算・案内ほかの窓口業務を廃止。問題の発生時は駅構内のインターホンを通じて知らせれば、必要に応じて対象駅か近隣駅の係員が対応する。車いす使用者など乗降車時に介助が必要な場合は、利用の前日午後5時までにインターネットで「介助事前受付サービス」に申し込むか「西武鉄道お客さまセンター」に電話をする。

 西武鉄道広報部は「窓口対応を専属的に担う係員は配置しないが、駅構内には一部の時間を除いて係員を配置する。配置する時間帯は防犯上や運用上の理由から公開していない」としている。 

 突然の発表に障がい者らからは「インターホンで話せない、ろうあ者はどうすればいいか」「介助の前日連絡が難しい時がある」「駅員がいない時、線路に物を落としたりした場合どうするのか」と不安や不満の声が相次いだ。

■駅構内の張り紙で告知 

 発表を受けて、西東京市内の複数の障害者団体が西武鉄道に面談を求めるなどした。「西東京市障がい者福祉をすすめる会」(根本尚之会長)など西東京市内の4つの障害者団体は今年1月5日、連名で西武鉄道と市に意見書を提出した。

 西武鉄道には「地域住民への事前説明は一切なく、駅構内の張り紙での一方的通知という進め方は公共交通機関としての説明責任を著しく欠いている」として、住民説明会の開催とともに具体的な安全対策の明示、高齢者や障がい者への支援体制の明示を求めた。

 西東京市には「市が西武鉄道に安全対策の確認や住民説明を要請した形跡はなく、市民への情報提供も行われていない」として、安全対策や説明会開催を要請するよう伝えた。

 これに対して西武鉄道は、駅の利用方法やサポート体制は公式サイトや駅の掲示物で案内しているため説明会は開催せず、支援体制は遠隔対応や設備の整備、介助事前受付サービスなどで対応する旨を回答した。

 障害者団体側は「回答書からは各種対策が障がいを持つ利用者一人ひとりの細かいニーズに合致しているのかが具体的に読み取れない」として、視覚障害や言語障害などさまざまな障害を持つ利用者が実際に遭遇する状況を想定した安全対策や支援体制に関する16項目の質問状を提出し、対面での意見交換を求めた。

 2月16日、西武鉄道は広報部課長ら2人が面談に応じ、各質問に対しては基本的にインターホンを通じた指示や遠隔操作、駅係員の呼び出し、カメラ越しの確認、筆談器などで対応する旨の回答書を示した。事故やトラブル発生時はホームの列車非常通報装置のボタンを押すよう求めている。

 西武鉄道は「無人化」という表現を使っていないが、夜間の午後10時から午前7時までに無人となる非公表の時間帯があり、昼間における駅員配置はこれまでの3人体制から1人体制になるという。

 根本会長は「本質的な問題は、西武鉄道が『駅に実際に駅員がいるのか、いないのか』という基本的な運用情報を明らかにしていない点にある。これを曖昧なままにしてしまうと駅の運用の多くが不透明となり、利用者には大きな不安要因となる。とりわけ事故や急病などの緊急時に対応できない時間帯があるとなると、利用者には重大なリスクだ。公共交通機関としてどんな体制で安全を確保しているのかを利用者にわかる形で説明するべきだろう」と話す。近く情報開示などを求める要望書か意見書を提出したいという。

■市民全体への影響

 西東京市議会定例会では、遠隔対応駅化に対する市の対応への批判が相次いだ。3月3日のやまき明美市議(共産党)の質問に対して、市側は昨年11月に非公式情報として西武鉄道から交通課に遠隔対応駅化の連絡があり、12月の公式発表後に市長に報告したことを明らかにした。

 やまき市議は、高齢者や障がい者には窓口廃止や無人時間帯について大きな不安があることを伝えたうえで、「昨年11月の時点で、全庁で情報を共有して市民への影響を検討すべき重大案件だった。障がい者だけではなく市民全体に関係することであり、利用者の不安を捉えて企業に提案、助言するのが市の役割。遠隔対応化が市民に与える影響を検討して、西武鉄道に積極的にアクションを起こしてほしい」と市の主体的な姿勢を求めた。

 翌3月4日には、田村ひろゆき市議(無所属)が「多くの市民に影響のある体制変更であるにもかかわらず、 説明と対話の場が足りなかったのではないか。市は市民生活に影響を及ぼす可能性があるという認識を持たなかったのか」と問いただし、「体制を変更するのであれば、ホームドア設置による安全対策を同時にすべきではなかったか」と訴えた。

 答弁で池澤隆史市長は「市としては利用客への影響を踏まえ、市民への利便性、安全性の確保、利用者への情報提供について丁寧な対応を求めた。ホームドアの設置については引き続き強く要望している」と述べた。

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By 片岡義博

共同通信社の文化部記者として主に演劇、論壇を担当。福岡編集部、文化部デスクを経て2007年にフリーに。書籍のライティングと編集、書評などを手掛ける。2009年から小平市在住。

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